＃8 帰り道 ページ10
◈真緒side◈
紫月を見ていて思う。
この1年ですごく成長して、強くなって。
真緒「(辛くて会えなかった両親にも、紫月はちゃんと向き合えたんだ…)」
本当に、すごいと思う。
紫月の笑顔を見る度に、俺まで嬉しくなった。
紫月「…真緒くん。」
真緒「ん、どうした？」
紫月「…今日は、ありがと…」
帰りの電車で、紫月は俺の裾を掴む。
真緒「俺の方こそ、会わせてくれてありがとな。」
紫月の手を優しく握って、恋人繋ぎに変える。
まだ慣れていないのか、ほんのりと頬を赤くする紫月がまた可愛い。
そう思いつつ、電車を降りたその時だった。
「…あれ、真緒じゃない？」
真緒「え？」
名前を呼ばれて振り向くと、中学時代の同級生が手を振りながら駆け寄ってきた。
懐かしい顔に俺も手を振り返す。
紫月は繋いでいた手を離して、邪魔しないようにするためか俺の後ろに隠れた。
「久しぶり〜！この前テレビで見たよ。ほんとにアイドルになったんだ〜。」
真緒「ほんと久しぶりだな。卒業式以来か？」
この子は「真緒ならアイドルになれそう」なんて言ってくれた女の子で。
「じゃあやってみようかな〜」という感じで、進路を夢ノ咲学院に決めたきっかけだった。
言った本人は、俺が本当にアイドルになったことに驚いているみたいだけど…。
真緒「そうだ。今度ライブあるから、よかったら見に来てくれよ。」
「そうなんだ！部活がなかったら行きたいな〜。」
ふと友達の視線が俺の後ろにいる紫月に変わる。
「あ、もしかして友達とお出かけ中だった？引き止めちゃってごめん！」
真緒「あ、いや…(友達っていうか…)」
「私もそろそろ行くね！今度同窓会とかあったら誘うから、暇だったら来てよ。」
真緒「あ〜…うん、時間があれば行くよ。またな。」
友達がいなくなると、紫月はまた俺の裾を掴んだ。
真緒「待たせてごめんな、紫月。中学の時の同級生で、懐かしくて…」
紫月「ううん…大丈夫。」
真緒「(…ん？)」
なんとなく、さっきまでの紫月と違う気がして…俺は顔を覗き込む。
なんとも言えないような顔…理由は分からなかった。
真緒「(紫月に気を遣わせて、悪いことしたな…)
…そうだ、紫月。まだ時間大丈夫か？」
紫月「大丈夫。」
真緒「じゃあ、ちょっと寄り道して帰らないか？」
紫月「…うん。」
俺は手を差し出し、紫月とまた手を繋ぐ。
行く先は不思議とあの場所を目指していた。
紫月「……。」
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作者名：紫鶴 | 作成日時：2021年8月4日 15時
