【サンジ】やっと、 ページ12
「もうやめにしよう」
こちらを見るサンジの瞳が、あつい。
もう、逃げられない。
ぼくとサンジは、バラティエで一番と二番の古株だ。
レディファーストを覚える前のサンジとぼくは犬猿の仲で
顔をつき合わせれば喧嘩をしないことは無かった。
二人で暴れオーナーに怒られたことももう数えられない。
「おいA！！なッンでこのコースのブティフールに
このコーヒー豆合わせんだよ！！？」
「はぁ！？これが最適解だからに決まってるだろ！！？
ぼくのペアリングに文句あるっていうのか！！」
意見が噛み合わないことなんて日常茶飯事だった。
でも、ぼくらの共通言語もまた、
"食"に他ならなかった。
従業員も増えてきた頃、ぼくはタチの悪い客に絡まれた。
唯一の女従業員だから仕方ない面もあるとはいえ、
屈辱だった。悔しかった。
だから、サンジにお願いしたんだ。
「サンジはわたし……ぼくのこと、女扱いしないでね」
サンジは女性には、誰の例外もなくべらぼうに優しい。
だから、例外になるんだ。
見た目も男にできる限り寄せた。胸も毎日潰した。
あとは、サンジが女扱いしなければ、いいんだ。
「は？何言って……」
「お願い。ぼく、きみたちと対等に、この店にいたい。
……聞いてくれる？」
サンジは、すごく苦しそうに悩んで、
「……ッわかった」
渋々了承してくれた。
ありがとう、という声は、小さくなった。
このお願いは、ぼく自身にとってもつらいから。
サンジを好きだって気持ちも、隠すことになるから。
「……なァ、A」
「ん？どうしたのサンジ」
夜風が気持ちいい。
サウザンド・サニー号に、ぼく達はいる。
あれから、随分仲間が増えた。
時折バラティエの皆を思い出して会いたくなるけど、
それは、まだ時期じゃない。
伏せた瞳が開かれて、そのあつさがぼくを捉えた。
「"女"をナメる奴はこの船にはいねぇ。もうAが
男のフリする必要はねェだろ」
風上に立つサンジ。
ぼくに直接風が当たらないよう、配慮してくれている。
「……惚れた女に、優しくできねェのはもうゴメンだ」
カサついた指先がぼくの頬を撫ぜる。
やめて。優しくしないで。
「サンジ……」
「やっと、女のお前に触れられる」
……もう、逃げられない。
「……もう、やめにしよう。
あの日のお願い、破っちまってもいいか？」
何より、好きが溢れて止められない。
「……うん」
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星波(プロフ) - お菊推しさん» 初めまして！閲覧ありがとうございます。申し訳ございませんが、リクエスト等は受け付けておりません。書きたいと思うことがあれば書きますし、それがなければ書かないと思います。申し訳ございません。 (2022年9月5日 23時) (
レス) id: 99055290f6 (このIDを非表示/違反報告)
お菊推し(プロフ) - あのすみません､お菊って出来ますか？あんまり夢小説で見たことがなくて聞いてみたのですが。大丈夫でしたでしょうか？ (2022年9月4日 9時) (レス) id: c04714e485 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：烏丸 | 作成日時：2022年8月2日 23時
