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「まきー!」




大きい家だった。


誰かの声が、幼い声が、響いていた。




少女が呼ぶ"まき"とは、私が知っている真希さんのだろうか?




ふわふわとした何かに包まれながら、遠くで動くものを見る。



まき、と呼ばれていたのはやっぱり真希さんで。



でも今の真希さんとは違う。


背は小さくて、顔も今より幼い。


幼い頃の真希さんだった。




真希、と呼んでいた少女の方に目を向けて、私は自分の目を疑う。






茶髪、赤眼。


黒い紐をカチューシャみたいに着けている。




それは、間違いなく幼い頃の私だった。



真希。


そう呼んでいたのは私だった。






「A、いいのか?こっちに来て」

「うん!お兄ちゃんも今お話してるから」





遊ぼう、と言ってお互いの手を取る。





今まで忘れていた記憶。


ゆっくりと。確かに蘇る。



父さんと母さんが死んだ後。

私は誰かに連れられて何度か禅院家に来た。



そこで真希に出会った。




友達が居なかった私に真希さんは優しくしてくれた。

遊んでくれていた。


その瞬間は楽しくて。


たぶん、あの時の自分にとって1番嬉しかった。


その感情を、今思い出す。




どうして、今まで忘れていたんだろう。


こんなにも、幸せそうなのに。





「A、帰るぞ」





中から誰かが顔を出す。


全身靄がかかっていて、誰かは分からない。

声も姿も鮮明ではない。


鮮明ではないのに、何を言っているかはわかってしまう。



ただ、懐かしい感覚があって。


暖かい感覚に包まれて。





「えー!もう帰るの?」

「ほら、手繋いで」





小さい私からしたら、随分と大きい背。


ほら、と手を差し出されるが、私はその手を頑なに取らない。



まだ、真希と一緒に遊んでいたい。





「A、今日は帰っとけ」

「でも…」


「また、来たらいいだろ」





また、来たら。


次も、会っていいんだ。



その言葉が嬉しくて、私は差し出された手を握った。



大きくて、暖かい手だった。





「またね、真希!」





手を振ると、真希さんも手を振り返す。


小さい頃の私は、表情豊かで。

無邪気に跳ねていた。



真希さんも今はかっこいい女性だけど


この頃は可愛らしい、少女だった。



誰か分からない、思い出せないその人に手を引かれ、禅院家を出る。




またね。




その約束は11年後。



そして、その記憶はこの死にかけの戦場で思い出す。




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設定タグ:呪術廻戦 , 五条悟   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:kyon x他2人 | 作成日時:2020年11月7日 15時

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