透明オルタナティブ【呪術廻戦】 (ページ19)

今日:18 hit、昨日:9 hit、合計:298,020 hit

. ページ19

.

「って事で、今日はここまで！
弓は真希に頼んで、手入れして貰うよ」

帰った帰った〜、なんて背を押してくる五条さん。

まだ分からないことがあるし、調べていたいのに。

「その紐を持たせてるってことはさ、何か理由があるんでしょ。自分の記憶を辿ってみな」

自分の記憶。

情けないことに、昔の記憶はほとんどない。

たまに思い出す時があるけれど、すぐに忘れてしまう。

記憶から抜け落ちている。

家族の顔も、声も、分からない。

靄がかかっているみたいに。

私から家族という存在を取り上げようとしているみたい。

「人ってさ、死にかけの時走馬灯見るって言うじゃん」

「……死にかけになれって事ですか」

「違う違う！何か大事な時に、そういうのって思い出したりするんじゃない？」

この弓だけでも収穫だよ！なんて明るく言う。

少なくとも親が死ぬまでは神社は受け継がれてきた。

でも、私が殺したから…

なんで、何も思い出せないの。

思い出さなきゃ、意味がないのに。

.

「明日学校なんでしょ？早く寝るんだよ」

駅まで五条さんと帰ってきた。

あの後、何とか言いくるめられて、神社から追い出された。

電車の中でも余裕そうに話しかけてきて。

考え事をしているなんて、お構いなしだ。

直感だった。根拠なんてない。

初めて会った時も何となく感じた感情。

この人は何か知っている。

あの笑ってる顔がチラつく。

腹が立つ。会って2日目だけど腹が立つのだ。

余裕そうな。私を見て笑ってるかのような。

この人について行ったら、全てが変わってしまいそうで。

「…私は、高専には入れないんですか」

「さぁね。君にそれだけの勇気と覚悟があれば考えてあげるよ」

含みを持った笑み。

知ってる。

私はこの人のことを知ってる。

どこかで、重要な場面で。

昔、会ったことある。

.