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「こいつの情報は」
「あんまり。名前がヴァッサゴで、個性が縄かな。私が縛られたのは、この人にだし」
動こうとする度、素肌が氷に当たり痛いのだろうか。
ヴァッサゴは苦しい顔を浮かべる。
あの笑みが気持ち悪いと感じていたが、こうして表情を変えられるのも気持ち悪い。
いつ動き出してもいいように、神経を集中させて、個性がすぐ発動できるようにする。
この人の実力は計り知れない。
傷一つつけないように。
ヴァッサゴの言葉を信じるなら、それをボスに言われた。
ヴァッサゴが個性を強く使わないのは、私に傷をつけないためで、対象に入っていない轟くんは危ない。
轟くんの実力なら私の力なんていらないとは思うけど。いざという時、助力にでもなれば。
「俺はセントラル広場に行く。さっき凍らせた奴らに聞いた」
「じゃあ、私も…」
「お前が来て何になる。敵が来ただけで震えて足が動かなくなってたお前に、何ができるんだ」
ド正論を言われた。ぐうの音も出ない。
確かに、私はあの敵の前に立つと、また足がすくんで動けなくなるだろう。
轟くんの他にも戦う人の邪魔になってしまう。
でも、何もしないのは嫌だ。
こうして轟くんが行こうとしている。自ら危険な場所に足を突っ込もうとしている。
それを私は知っておいて、何もしないのは嫌だ。
もし轟くんが大怪我してしまったら。知らんぷりなんて出来ない。
あの時ああしておけばよかったなんて後悔するなら、私は今やりたい。
もし出久くんなら、かっちゃんなら。
2人なら、絶対に行く。
「何も出来なくても、私は行きたい」
「だから、お前が来てもっ」
「憧れの人は、私が憧れてる人は、自分が無力だったとしても絶対に行く」
「憧れなんかで踏み込んでいい場所じゃねぇ」
空気が冷たい。
轟くんの冷気だろうか。怒っている。
目だって、怖い。目を合わせたら噛み付かれそうな、殺されそうな。
ヴァッサゴみたいに氷漬けにされそう。
でも、私は行きたい。
あの日見た涙を、私はずっと覚えている。
母の凄惨な姿を、昨日の事のように思い出せる。
私だって、ちゃんとヒーローになりたい。
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作者名：kyon x他1人 | 作成日時：2021年5月22日 21時
