兎少年と一週間(参)

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すまいるでは、過度なスキンシップを取ることを禁止されている。禁止でなくても自分から人に触れるようなことをするつもりはなく、その事は私の性格を知っている神威さんも分かっていると思うので、心ない先の発言は然程気にしていない。

それよりも、 "そういう場" に出入りしたことがあると神威さんの口から飛び出した事の方が気になってしまった。
お店の女性に言い寄られている場面を想像したら、胸がかき乱される。本人が望まなくても仕事上の付き合いで行くこともあっただろう事は安易に想像がつく。
私も元の世界では本部の方とお酒の席をご一緒したことがあるので、断りを入れる手間もわかっている。

「ごめんなさい、 すごく感じの悪い言い方にっ…もっとこう、普通に訊こうとして…！」

今まで似たようなことがあっても納得できたり気にならなかったりしていたのに、今回は気持ちがついていかない。
そのせいか、思ったより低い声が喉を鳴らした。こんな声を出せたんだと自分の事なのに驚きを隠せない。

…本当ならいつもみたいに訊くつもりだった。

悪気がなかったにしろ、あんな風に言われては気分を悪くしていてもおかしくない。両手を胸元で握り締め、不安な気持ちを抑え込む。
先程までの口数の多さが嘘みたいに減り、何も言い返さない神威さんの様子が更に不安を煽っていく。

「…神威さん？」

返事はない。けど、乱れたマントは直してくれた。
前髪が顔にかかっていてどんな顔をしているのか、わからない。




────…

「…どうしたらいいんだろ」

ぽつり、言葉を漏らしたところで不安は解消されない。
結局 気まずい状態のまま、万事屋に帰ってきてしまった。銀さんも神楽ちゃんも先に寝てしまっていて、リビングに神威さんを残し、私は逃げるようにお風呂場へ駆け込んだ。

念入りに全身を洗ったので指摘されていた臭いも石けんの香りに変わっている。
寝間着代わりのシャツに腕を通し、リビングへ戻ると神威さんは顔を俯かせてソファーへもたれかかっていた。

人ひとり分あけて座れば、隣から聞こえてきたのは小さな寝息。先に寝てしまったらしい。
なにか掛けるもの持ってこようと腰を浅く上げるも立ち上がりきる前に、私の腰は再びソファーに沈んだ。

「っ！ 」

寄り添うように倒れ込んできた神威さんを両手で支える。
お、重たい。 何度も元の位置に押し返すも支えの失った体はまたすぐに倒れ込んでくる。いっそ乱暴に抜け出して……、ううん。もしそれで起こしてしまったら可哀想な気がする。

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