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行くあてもない散歩は神威さんにとって面白味にかけるものだろう。町外れの土手まで来てしまったけれど、このまま歩いて行ったら何処へ着くのかな。かぶき町の外を見たことのない私にとってこの先は未知の世界。
(遠くへ行ったら心配かけちゃうかも)
定春くんを送り届けた時 先に帰っていた神楽ちゃんに神威さんと出掛けてくるねと話はしてあるので、多少遅くなっても大丈夫だとは思うもあまりに遅い帰りになってしまうのは避けておきたい。
こんな時間に帰ってきてお盛んだねえ〜銀さんにも元気玉わけてくれや。何? ただ歩いてただけ? どこまで行ったの。A?B? おいおいまさか飛んでJか??……うん、銀さんならそんな下ネタを投げてきそう。
徐々に歩くスピードを落としていき、神威さんと距離を置いてから静かに息をつく。
「神威さん」
「なに?」
「そのまま、聞いてもらえますか?」
引き返して来ようとする姿に小さく笑いかける。
「神威さんに、ずっと内緒にしていたことがあって」
「メガネくんと浮気してたこと?」
「それはさっき神楽ちゃんの冗談だったってお話したばかりですよ」
偽情報を掴まされていた神威さんは疑り深く先程から同じ話題の連続。デートではないにしろ、誰かしらと二人で真選組へ行っていたことは今は胸の奥にしまっておく。
「神威さんがいない日に会いに行ってたんです」
「誰に」
「例の天人の方にです」
神威さんの肩がぴくりと動いた。
「へえ、俺に無断で自分を貶めた相手と逢引してたんだ。 大層気に入られていたみたいだけど、ご機嫌取りでもして帰る段取りでもつけてきたの?」
神威さんは歩幅を広げて私の前までやってきた。
… もう、そのまま聞いていてとお願いしたのに。
幾分か身長差のある神威さんを見上げると口元に笑みを作りながらも目だけは笑っていなかった。その目に怒気は含まれていない。 一瞬 寂しげに影を落としたように見えた気もするが感情は読み取り難く、無に近い。
「顔が可愛いと褒められました」
「そう よかったね。 それで?」
「帰らせてくれるとも言ってくれていて」
「……」
「…この町に長く居過ぎちゃったみたいです。
私 帰らないと───…」
言い切る前に、視界は蒼色で満たされた。
「ダメ」
向けられた言葉は短く、けれど柔らかく感傷的な声。
重ねられた唇は触れるだけの行為を繰り返し、不足した酸素を取り込もうと口を開けば、包み込むように抱き締められた。…あたたかい。気付けば、夕日は沈んでいて肌寒さを感じる程 外気は温度を下げていた。
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めぐぽん(*´・∀・)(プロフ) - こんにちは!夢主さんが幸せでいられる事を願います。面白かったです。 (6月6日 10時) (レス) @page42 id: baf8bee298 (このIDを非表示/違反報告)
おふ - 一気読みしました!!(´TωT`)まじ最高でした!!ありがとうございました!!! (2022年9月23日 16時) (レス) @page42 id: 7784361647 (このIDを非表示/違反報告)
おいも(プロフ) - うりえルさん» どれも私には勿体無いお言葉ばかりでじんわりきました…( ; ; )たくさんの素敵な小説の中 夢中になって頂けた事、嬉しいコメントも頂けてこの作品を書き始めて本当によかったです…!こちらこそ最後までお付き合い下さりありがとうございました!(*´▽`*) (2021年4月26日 20時) (レス) id: 70decc27f6 (このIDを非表示/違反報告)
うりえル(プロフ) - 完結おめでとうございます。まず私はこの作品が大好きです!毎回兎少年と一週間の更新を楽しみにしていました。最後までおいもさんらしくて涙が出てきそうでした。私は初めて夢中になった小説です…もう感謝しきれないほど…。兎少年と一週間制作、誠にお疲れ様でした。 (2021年4月25日 4時) (レス) id: 45d3b70981 (このIDを非表示/違反報告)
おいも(プロフ) - 七瀬未来さん» な、な、七瀬さん〜!! ありがとうございます!褒め言葉の胴上げに浮かれてしまいそうになりました…(*´ `*) 更新が止まってしまったりと予定より長引いてしまいましたが最後までお読み頂けてとっても嬉しいです(∩´∀`)∩! (2021年4月21日 2時) (レス) id: 70decc27f6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おいも | 作成日時:2020年9月18日 1時