兎少年と一週間(弐)

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名前を呼ばれて反射的に体を動かそうとするも、どうやら自分が思っていたより派手に落ちてしまっていたようで 全身が痛みに悲鳴を上げる。
こんな姿 神威さんに見られたら「脆い体だね」なんてせせら笑われそうだ。

力を入れるだけ体に優しくないと即座に判断して、だらりと体の力を抜く。

そんな私を青年こと この世界の主要人物の一人…沖田総悟は、蒼い瞳を持つ神威さんとは正反対の紅い瞳で穴があきそうなくらい見てくる。


「いやァ 最近のコスプレはすげーや。髪は地毛ですかィ？」

「ッいだだ…！
いっ痛いです、やめてください…！！」

痛みに耐えながら、グイグイと人の髪を引っ張る沖田くんの手を掴めば自分の腕に赤いものが滴り落ちていった。
あのこれ、見て。沖田くん、見てください。
私 血が出るくらい怪我してるんです。見た目擦り傷っぽいですが怪我してるんです…！

若干の苦手意識が芽生えつつある中 彼の良心に訴えかけるべく、擦り切れた箇所を相手の視界に滑り込ませた。


「…へェ、イイ顔するじゃねーか。
痛みに歪む表情も中々 完成度高 …」

「おい、仕事サボって何してんだテメェは」

どす黒い笑みを浮かべた沖田くんの手が痛々しく色付いたそこへ伸びたその時 彼の頭を後ろから誰かが引っ叩いた。

「いってェな…って、ありゃりゃ。土方さんじゃないですかィ。こんな所でサボってねェで働いてくだせェよ」

「サボってンのはテメェだ！！」

「そんな事より土方さん。見てくだせェ、この女。
ソックリじゃありやせんか？」

「テメェ話を…って、誰だその女」

また一人出会ってしまった主要人物…沖田くんの上司である土方さんに上から鋭い眼光を向けられ、身が竦む。
しかし 反応は沖田くんよりも普通。
やはり私の名前を知っている沖田くんがおかしいのだと再確認する事ができた。


「あり？ 土方さん、もしかして読んでないんですかィ？ 最近流行りの

" 引きこもりな私が外に出たら、たまたま出会った金髪碧眼(きんぱつへきがん)の美少年に一目惚れされちゃった！？ "

略して 金た●。
そこの女、それに出てくるモブにソックリなんでさァ」

……今なんて？
某人気小説たちを連想させる長々としたタイトルを頭の中で繰り返す。引きこもり、金髪碧眼、…。

なるほど、なるほど。偶然にもその本に出てくるキャラと私が似ていて同姓同名だったと。
謎が解けてスッキリするも私の中でまた新たな疑問、というより問題が生まれてしまった。


(…私の知り合いに タイトルと似てる子が二人もいるのは流石に偶然じゃない気がする)

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