十四兎 ページ45
──…
人のざわめく声に手繰り寄せられ、途切れた意識を取り戻す。
ぼんやりと視界に映ったのは見慣れないアスファルトの天井。…あれ、室内? 外にいたはずなのに、と体を起き上がらせる。すん、と鼻を鳴らせば、鉄の臭いが嗅覚を刺激し、少しずつ意識が定まっていく。
「これが団長の?」
「女の趣味変わったか?」
「いいや、そもそもあの人は食と戦以外に興味ねえだろ!」
拾い上げた声の方へ顔を向ければ、頑丈そうな太い鉄格子が一枚あり、その反対側でガハハ!と豪快な笑い方をする厳つい顔つきの人達が此方を見ていた。
中には、寒イボが立つくらいニタニタ笑みを浮かべている人も。…どうにもその笑顔は生理的に受け付けず、膝にかかっている薄い布切れを握り締める。
そんな小さな行動一つ見逃さなかった一人が「生娘みたいだ」とあざけ笑った。
「この女、大して強くもなさそうだが…もしかしてベッドの上じゃ凄いんじゃねーか?ひん剥いて見るか!…ッいでえ!」
「やめとけェ。減給どころの騒ぎじゃ済まねーぞ」
「おいおい、それお前が言うのか? 阿伏兎」
神威さんと似た服装の人達は、入れ代わり立ち代わりやってきては口々に言いたい放題言っていく。そんな人達を咎めたのは、後からやってきた金髪の男の人。
仲間から阿伏兎と呼ばれるその人は、神威さんの片腕と呼ぶに相応しい重要人物。あの晩、暗くて分からなかったが、特徴的なこの声からして私を連れてきたのは阿伏兎さんに違いない。
「悪いな。生憎此処には女の扱いを知らねェゴロツキばかりなんだ」
「…い、いえ…」
一方的にではあるが、漸く見知った人の登場に少し安心した。
「ところで、腹の調子はどうだ?
手加減はしたつもりだが」
そう言われておへその辺りを擦れば、ズキズキと痛む。
骨折と比べるとマシな痛みではあるものの、顔を顰めてしまうくらいには痛い。
「調査報告にはあったが、やっぱり脆いのか」
「阿伏兎。お前別の女連れて来たんじゃねーか?
団長が気にいる要素が一つも…」
「間違っちゃいねえさ。調べさせたんだ。
…だがまぁ、今更普通に焦がれるタチでもねえ。大方 他の世界の女だから気になってるんだろう」
「にしては、地球人とそう変わりないようだが。
なぁ、嬢ちゃん。うちの団長様をどう落としたんだ?」
おふざけ無しの真剣な問い掛けに、神威さんを落とせるような強みとなる自分の長所を探るも残念ながら思い当たるものは何一つなかった。
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おいも(プロフ) - えりぃさん» コメントを頂いてからお時間があいてしまいすみません( ; ; )少しでも神威さんの良さをお借りできたら、と思っていたのでそう言って頂けてとっても嬉しいです(´ `*)これからも楽しんでもらえるように精進致します…! (2020年9月16日 0時) (レス) id: 70decc27f6 (このIDを非表示/違反報告)
えりぃ(プロフ) - とっても面白いです!神威がカッコ良すぎます!続きたのしみにしています(ω) (2020年9月9日 10時) (レス) id: 0b16f52b12 (このIDを非表示/違反報告)
おいも(プロフ) - みさまるさん» 引き続き楽しんで頂けていてよかったです(´ω`*) 更新の度になんて嬉しいお言葉まで…( ; ; )疲れがスススッと飛んでいきました…!ありがとうございます(*´ `*)三(*´ `*) (2020年8月16日 21時) (レス) id: 70decc27f6 (このIDを非表示/違反報告)
みさまる - 更新のたびに楽しく読ませてもらっています!そして最近の展開にドキドキ(* >ω<)ヤバい〜面白いです!更新ありがとうございます!!! (2020年8月15日 21時) (レス) id: fa0a68f749 (このIDを非表示/違反報告)
おいも(プロフ) - しおりさん» ほほ本当ですか…!ありがとうございます!私もコメントを頂けてドキドキしてしまいました…!(*´ω`)少しでも一日の活力の足しになっていましたら幸いです(´ `*) (2020年8月5日 12時) (レス) id: 70decc27f6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おいも | 作成日時:2020年5月6日 18時