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「理由がないと折っちゃいけないのかい」
意を決して問いかけたそれに、神威さんは淡々とした色味のない口調で返してきた。純粋な子供が聞き返すそれとも、悪いとわかっていながら開き直るそれとも違う。
にこやかに笑みを張り付けているポーカーフェイスも相まって神威さんの思考は謎に包まれている。
色々な考えが頭の中を巡り、直ぐにいけないことだと言えずに黙り込んでいると、神威さんは口を開き沈黙を破った。
「強いて言うなら、アンタを見てると腹が立つんだ」
「……そ、そうなんですか…」
あ、ちゃんとした理由があった。
そう他人事のように頭で受け止めるも人から面と向かってそんなことを言われたのは初めてで、胸の奥が鋭いもので刺されたように痛む。
嫌われてはいない、そう考えていたのを否定されたも同然で覇気のない返事が自然と漏れ出た。
真っ直ぐ神威さんを見ていられなくなり、シワのついた布団のシーツへ視線を落とす。
このシワを綺麗に伸ばしたら今夜は気持ちよく眠れそうだなぁ、なんて現実逃避をしながらそぐわないことを考えていると、こっちを見ろと言わんばかりに私の視界に神威さんが入り込んできた。布団の上で胡座をかき、私を見上げている。
「───…でも、アンタを傍に置いておくのは嫌いじゃないよ。こうしてる時間も悪くないし」
そう話をしながら頬杖をつく神威さんの前に無言で膝を折れば、向けられていた視線も一緒に下りてきた。
ころころ変わる意見についていけない。…結局 神威さんが私のどんな所に腹を立てたのかもわからないままだ。
けれど、嫌いではないと言い切ってくれた。
荒立っていた気持ちが穏やかになり、それが顔に出てしまっていたようで神威さんは口元を緩ませると私の頬をお餅みたいに抓ってきた。
「そろそろ機嫌は治った？
いつものアンタじゃないと調子出ないんだけど」
「…調子を狂わせてるのは神威さんですよ」
「その言葉 そのまま返すよ」
神威さんの手を引き剥がせば、一瞬 ぎゅ、と手を握られた。それが故意なのかはわからないくらいに自然な動作で直ぐに離された手は行き場をなくし、宙を彷徨う。
程なくして洗面所の方から傷んだ床を踏み鳴らす誰かの足音が聞こえてきた。それを耳にした神威さんは何食わぬ顔で立ち上がり、足先を隣の部屋へ向けた。
「じゃ、おやすみ」
どうやら一緒に寝ると言っていたのは冗談だったようで、ひらりと手をなびかせながら神威さんは立ち去って行く。 去り際にかけられたその言葉は、その日一番柔らかい口調だった。
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おいも(プロフ) - えりぃさん» コメントを頂いてからお時間があいてしまいすみません（ ; ; ）少しでも神威さんの良さをお借りできたら、と思っていたのでそう言って頂けてとっても嬉しいです(´ `*)これからも楽しんでもらえるように精進致します…！ (2020年9月16日 0時) (
レス) id: 70decc27f6 (このIDを非表示/違反報告)
えりぃ(プロフ) - とっても面白いです！神威がカッコ良すぎます！続きたのしみにしています(ω) (2020年9月9日 10時) (レス) id: 0b16f52b12 (このIDを非表示/違反報告)
おいも(プロフ) - みさまるさん» 引き続き楽しんで頂けていてよかったです(´ω`*) 更新の度になんて嬉しいお言葉まで…（ ; ; ）疲れがｽｽｽｯと飛んでいきました…！ありがとうございます(*´ `*)三(*´ `*) (2020年8月16日 21時) (レス) id: 70decc27f6 (このIDを非表示/違反報告)
みさまる - 更新のたびに楽しく読ませてもらっています！そして最近の展開にドキドキ(* >ω<)ヤバい〜面白いです！更新ありがとうございます！！！ (2020年8月15日 21時) (レス) id: fa0a68f749 (このIDを非表示/違反報告)
おいも(プロフ) - しおりさん» ほほ本当ですか…！ありがとうございます！私もコメントを頂けてドキドキしてしまいました…！(*´ω`)少しでも一日の活力の足しになっていましたら幸いです(´ `*) (2020年8月5日 12時) (レス) id: 70decc27f6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おいも | 作成日時：2020年5月6日 18時
