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「神威さんっ、神威さん……! 歩くの早いです!」
「ちんたらしてると置いてくよ」
「そんなこと言われても…!」
お店を案内するよう言ってきたのは神威さんの方だというのに、どうして私より前を行くのか。早足でどんどん進んでいくその背中を必死に追いかける。
歩幅の違いや借り物の草履に慣れていない事もあり、私達の距離はあっという間にあいていく。
声を掛ければ少しの間待っていてくれるも、それが三度目ともなると此方の様子を気にかけることもなく、神威さんは瞬く間に人混みの中へと消えていってしまった。
(…ほ、本当に置いて行かれた)
唖然としてその場に立ち尽くす。
ハッ、と我にかえりトレードマークともいえる紫色の番傘を探して回るも人通りの多さに見つける事ができず、駆けていた足の速度をゆっくりと落としていく。
「っ痛た、」
歩くのをやめれば、足の指先にズキズキと痛みが走った。 痛みの原因を探ろうと下を向けば、
や、やるせない…。
溜息を漏らしながら、道の端っこに身を寄せる。
こんなことなら、はぐれないようにマントでも掴ませてもらえばよかった。 ……神威さん、探しに来てくれるかな。 痛む足を脱いだ草履の上に乗せながら、歩いていた方向を遠く眺める。
「あ、コスプレ女」
独特な呼び方と気怠げな声に、ギクリと肩が上がり、早速はぐれてしまったことを後悔した。
「…こ、こんにちは」
こわごわと顔を横へ動かすと私服姿の沖田くんが人混みの中からひょっこり、現れた。
初めて会ったあの日以来のご対面に、軽くトラウマを植え付けられた私の体は意志とは関係なく縮み上がる。
平然を装い、挨拶を返すも心の内を見透かすように沖田くんは愉しげに口に弧を描いた。 嫌な予感を報せるかの如く、空に暗雲が立ち込める。
…ここで足が痛いことを悟られてはいけない。
そしてなにより、神威さんとも会わせてはいけない……! 因縁関係かつ戦う事を好む二人を会わせようものなら、この辺り一帯が大惨事。 い、一刻も早くここから離れて神威さんを探しに行かないと。
「す、すみません。急いでいるのでこれで…」
「足。 引きずってやすぜ」
草履を履き直し、去ろうとする私の足元に沖田くんは屈むと痛む方の足を指差した。ば、ば、バレてる…!
観察力の高さに思わず足を一歩後ろへ下げれば、それを追うように沖田くんは真顔で手を伸ばしてきた。
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おいも(プロフ) - えりぃさん» コメントを頂いてからお時間があいてしまいすみません( ; ; )少しでも神威さんの良さをお借りできたら、と思っていたのでそう言って頂けてとっても嬉しいです(´ `*)これからも楽しんでもらえるように精進致します…! (2020年9月16日 0時) (レス) id: 70decc27f6 (このIDを非表示/違反報告)
えりぃ(プロフ) - とっても面白いです!神威がカッコ良すぎます!続きたのしみにしています(ω) (2020年9月9日 10時) (レス) id: 0b16f52b12 (このIDを非表示/違反報告)
おいも(プロフ) - みさまるさん» 引き続き楽しんで頂けていてよかったです(´ω`*) 更新の度になんて嬉しいお言葉まで…( ; ; )疲れがスススッと飛んでいきました…!ありがとうございます(*´ `*)三(*´ `*) (2020年8月16日 21時) (レス) id: 70decc27f6 (このIDを非表示/違反報告)
みさまる - 更新のたびに楽しく読ませてもらっています!そして最近の展開にドキドキ(* >ω<)ヤバい〜面白いです!更新ありがとうございます!!! (2020年8月15日 21時) (レス) id: fa0a68f749 (このIDを非表示/違反報告)
おいも(プロフ) - しおりさん» ほほ本当ですか…!ありがとうございます!私もコメントを頂けてドキドキしてしまいました…!(*´ω`)少しでも一日の活力の足しになっていましたら幸いです(´ `*) (2020年8月5日 12時) (レス) id: 70decc27f6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おいも | 作成日時:2020年5月6日 18時