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地面との再会に胸を撫で下ろせば、よかったね、と笑いかけるかのように空を飛び交うカモメたちの鳴き声が耳に入ってくる。 波音と併せて聴きながら、一瞬海の方へと意識が向いた。
「今日は一人?」
少し間を置いてから振られた問い掛けに、逸れかけた意識を神威さんへ戻す。他に人が居ると不都合でもあるのだろうか。それとも妹の神楽ちゃんに会いたいのか。
訊かれた意図を考えながら、私は首を縦に振った。
「はい、 今日は寂しいことに一人です」
「お侍さんは?」
「…坂田さんですか? ええっと、坂田さんなら万事屋に。 あ、神楽ちゃんたちはお出かけで…」
「
「そんなこと言うと神楽ちゃん、怒りますよ」
憎まれ口を叩きながらも神楽ちゃんの事を気に掛けているのは知っている。神威さんなりの照れ隠しなのだろう。
…それでも、先日の兄妹喧嘩はやり過ぎだったけれど。直すのに何日もかかり、糖分不足も後押しして銀さんの機嫌はすこぶる悪く、チョコパフェを食べるまでそれは続いていた。
…潮風に揺れる神威さんの頭のアンテナを見ながら、ふと思いつく。元はといえば大人げない神威さんが原因。なけなしのお金で注文したチョコパフェの代金を請求してもいいのでは、と。
つい先程 失言をして海へ落とされかけた事は、私の頭からすっぽり抜け落ちていた。
「あ、あの。話は変わるんですが、こないだ坂田さんがパフェを食べに行って……」
「 "パフェ" ?」
神楽ちゃんの話からかなり脱線した内容にも関わらず、神威さんはその話に興味を示した。…主にパフェの部分に。 食い気味に返された言葉と開かれた瞳に、次に続くはずだった言葉は言いづらくなってしまい、私は口を閉ざした。
「一度食べてみたかったんだよね。
美味しい店、案内してよ」
「ちょっ、ちょっと待ってください…!」
町の方へ歩き出す神威さんを止めようとマントの裾を掴む。このまま神威さんについていったら、依頼どころじゃなくなってしまう…!
前へ回り込み、握り締めてシワの入った封筒を見せつけた。
此処へは万事屋の依頼でやって来てその依頼人を探している最中だということを伝えれば、封筒を見た後 神威さんは、にこりと笑った。
「それならアンタの目の前にいるよ」
「……え?」
神威さんの左右に目を配らせて、他に誰もいないことを確認する。
「…神威さんが依頼人ですか?」
「ご名答」
ということは、神威さんが依頼書を書いたことになる。
…見覚えがある字だと思ったら神威さんの字だったと今更気が付いた。
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おいも(プロフ) - えりぃさん» コメントを頂いてからお時間があいてしまいすみません( ; ; )少しでも神威さんの良さをお借りできたら、と思っていたのでそう言って頂けてとっても嬉しいです(´ `*)これからも楽しんでもらえるように精進致します…! (2020年9月16日 0時) (レス) id: 70decc27f6 (このIDを非表示/違反報告)
えりぃ(プロフ) - とっても面白いです!神威がカッコ良すぎます!続きたのしみにしています(ω) (2020年9月9日 10時) (レス) id: 0b16f52b12 (このIDを非表示/違反報告)
おいも(プロフ) - みさまるさん» 引き続き楽しんで頂けていてよかったです(´ω`*) 更新の度になんて嬉しいお言葉まで…( ; ; )疲れがスススッと飛んでいきました…!ありがとうございます(*´ `*)三(*´ `*) (2020年8月16日 21時) (レス) id: 70decc27f6 (このIDを非表示/違反報告)
みさまる - 更新のたびに楽しく読ませてもらっています!そして最近の展開にドキドキ(* >ω<)ヤバい〜面白いです!更新ありがとうございます!!! (2020年8月15日 21時) (レス) id: fa0a68f749 (このIDを非表示/違反報告)
おいも(プロフ) - しおりさん» ほほ本当ですか…!ありがとうございます!私もコメントを頂けてドキドキしてしまいました…!(*´ω`)少しでも一日の活力の足しになっていましたら幸いです(´ `*) (2020年8月5日 12時) (レス) id: 70decc27f6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おいも | 作成日時:2020年5月6日 18時