九兎 ページ24
「なぁ、アイツのことどう思ってんだ?」
「 "アイツ" ?」
「こないだ来ただろ。暴れん坊将軍サマが」
銀さんと二人、万事屋で留守番をしている
与えられたヒントから直ぐに思い浮かんだのは神威さんの顔。 避け続けていたその話題に、ついに触れられてしまった。
「…神威さんのことですか?」
テレビから目を離し、恐る恐るその名前を口にした。
当たりをつけた私に、銀さんは否定も肯定もせず、頬を机につけただらしない格好で只々私を見ている。
沈黙を縫うようにして流れるテレビの音声が雑音のように耳に障る気まずさ。
どういった意図で訊いてこられたのかも分からず、相手の次の言葉を待つもまだ私の喋る番は終わっていないとばかりに、銀さんは黙ったまま一言も喋ろうとしない。
「…良くも悪くも、周りの人を自分のペースに引き込むのが上手な方だなぁと思います」
先に折れたのは私の方だった。
当たり障りのないように、客観的に見た神威さんの印象を答えていく。しかし、これだけでは満足行くものではないらしく銀さんの口は未だ閉ざされている。
「けど、不思議と憎めなくてズルい人でもあるんですよね」
神威さんとの短い思い出を振り返りながら、言葉を紡ぐ。 何だか、胸の奥がこそばゆい。
「ああ見えて意外と優しいところも…って、大丈夫ですか?」
銀さんの顔色を覗いて見れば、顔面を机に押し付けて突っ伏していた。
「甘酸っぱいのはパフェに乗ってる苺だけで十分なんだよ」
「なんの話ですか」
「オイオイ、どっちも無自覚なのか?…勘弁してくれ」
銀さんは煩わしそうに溜息をつくと机の引き出しから一枚の封筒を取り出した。
歪な大きな字で「依頼」と書かれたそれ。
子供が慣れない習字で書いたような独特な筆の使い方。
見覚えがある。でも、どこで見たものか思い出せない。
「こういうのはどっちかが自覚した方が早ェ」
「坂田さん、坂田さん。さっきから話が見えません」
「あの手が焼ける兄妹喧嘩を止めたお前にならできる。
その手で野郎を尻に敷け。お前は万事屋の柱になれる期待の新人、逸材だ」
「坂田さん。私、会話のキャッチボールがしたいです」
「というわけで、コレ頼むわ」
あれれ。 銀さんの中では着々と話が進んでいるのに、私だけスタート地点から動けていない。
渡された封筒から依頼に行ってこい、ということだけ理解して、既に開封されていたそれから白い紙を引っ張り出す。中の紙には、封筒に書かれた文字と同様の筆記で「用意ができた。海辺で待つ」とだけ書かれていた。
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おいも(プロフ) - えりぃさん» コメントを頂いてからお時間があいてしまいすみません( ; ; )少しでも神威さんの良さをお借りできたら、と思っていたのでそう言って頂けてとっても嬉しいです(´ `*)これからも楽しんでもらえるように精進致します…! (2020年9月16日 0時) (レス) id: 70decc27f6 (このIDを非表示/違反報告)
えりぃ(プロフ) - とっても面白いです!神威がカッコ良すぎます!続きたのしみにしています(ω) (2020年9月9日 10時) (レス) id: 0b16f52b12 (このIDを非表示/違反報告)
おいも(プロフ) - みさまるさん» 引き続き楽しんで頂けていてよかったです(´ω`*) 更新の度になんて嬉しいお言葉まで…( ; ; )疲れがスススッと飛んでいきました…!ありがとうございます(*´ `*)三(*´ `*) (2020年8月16日 21時) (レス) id: 70decc27f6 (このIDを非表示/違反報告)
みさまる - 更新のたびに楽しく読ませてもらっています!そして最近の展開にドキドキ(* >ω<)ヤバい〜面白いです!更新ありがとうございます!!! (2020年8月15日 21時) (レス) id: fa0a68f749 (このIDを非表示/違反報告)
おいも(プロフ) - しおりさん» ほほ本当ですか…!ありがとうございます!私もコメントを頂けてドキドキしてしまいました…!(*´ω`)少しでも一日の活力の足しになっていましたら幸いです(´ `*) (2020年8月5日 12時) (レス) id: 70decc27f6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おいも | 作成日時:2020年5月6日 18時