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「帰っちゃうんですか…?」
立ち上がった神威さんを目で追いながら、ポロリと零れたその声は自分でも驚く程 弱々しいものだった。
この状況で一人残される心細さから出たその言葉に、神威さんは一瞬目を丸くする。
…幼い一面を晒してしまって、かなり恥ずかしい。
顔に熱が集中していくのが分かる。
「うん。報告しなきゃならない事が出来たからね」
神威さんは直ぐにいつもの笑みを取り戻すと再び膝を折り、私の目を見ながら幼子に言い聞かせるような口調で返事を返した。
「依頼の方はいいのか?」
銀さんの気怠げな問い掛けに神威さんは小首を傾げた。
…依頼? プライドの高い神威さんが依頼を持ってきたことが意外で釣られて私も首を傾げる。
「…ああ、そういえばそんな話もしてたね。
無償で請け負ってくれる気にでもなったのかい?」
「びた一文にもならねえなら話は別だ。
慈善団体にでも頼みやがれコノヤロー」
「まぁ、いいさ。
目的は半分達成されたようなものだし」
そう言って神威さんは私を見ながら微笑んだ。
「妹共々 コイツのこと頼んだよ。
呆れるくらい弱い上に下着のセンス悪いけど、使えなくはな…」
「っ神威さん!!!」
慌てて神威さんの口を手で塞ぐ。
もごもご、と続きを喋ろうとする相手の唇の柔らかい触感が手のひらに伝わってくる。
やましい心は一切ないのに、そこが触れてはいけない場所のような気がしてきて羞恥心に駆られる。
神威さんは私の手を取ると横目で神楽ちゃんたちの方を見た。
「寂しくてじゃれつきたいのは解るけど、程々にしないと誤解されちゃうよ」
誤解の種しかまいてない人に言われたくはない。
頭の中で思ったそれをそのまま言葉にしようとするも持っていたお団子を口の中に押し込まれてしまった。
「近いうちにまた来るからさ。
ちゃ〜んといい子で待っていられたら構ってあげる。
…聞きたい事もあるしね」
銀さんの方を向いて最後の言葉を口にした神威さんに、神楽ちゃんはペッ!と床に唾を吐き捨てた。
「性懲りもなくまた来るつもりアルか。
文無しに用はないネ。次来るときは上等なたぴおかでも持ってくるヨロシ」
「バカがうつるからそろそろ行くよ」
「バカっていう方がバカアル。だから
「
「保護者ヅラすんなバカ兄貴!!」
私を介して突っかかる神楽ちゃんを楽しげにいなしながら、神威さんは帰っていった。
嵐が去り、戻ってきた平和な時間に新八くんの安堵の息と銀さんの溜息が重なり合った。
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おいも(プロフ) - えりぃさん» コメントを頂いてからお時間があいてしまいすみません( ; ; )少しでも神威さんの良さをお借りできたら、と思っていたのでそう言って頂けてとっても嬉しいです(´ `*)これからも楽しんでもらえるように精進致します…! (2020年9月16日 0時) (レス) id: 70decc27f6 (このIDを非表示/違反報告)
えりぃ(プロフ) - とっても面白いです!神威がカッコ良すぎます!続きたのしみにしています(ω) (2020年9月9日 10時) (レス) id: 0b16f52b12 (このIDを非表示/違反報告)
おいも(プロフ) - みさまるさん» 引き続き楽しんで頂けていてよかったです(´ω`*) 更新の度になんて嬉しいお言葉まで…( ; ; )疲れがスススッと飛んでいきました…!ありがとうございます(*´ `*)三(*´ `*) (2020年8月16日 21時) (レス) id: 70decc27f6 (このIDを非表示/違反報告)
みさまる - 更新のたびに楽しく読ませてもらっています!そして最近の展開にドキドキ(* >ω<)ヤバい〜面白いです!更新ありがとうございます!!! (2020年8月15日 21時) (レス) id: fa0a68f749 (このIDを非表示/違反報告)
おいも(プロフ) - しおりさん» ほほ本当ですか…!ありがとうございます!私もコメントを頂けてドキドキしてしまいました…!(*´ω`)少しでも一日の活力の足しになっていましたら幸いです(´ `*) (2020年8月5日 12時) (レス) id: 70decc27f6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おいも | 作成日時:2020年5月6日 18時