六兎 ページ15
(side 新八)
Aさんが来てから一週間と少し。
僕たちと出会ってそこまで経っていないはずなのに、彼女はすっかり万事屋に溶け込み始めていた。
「では、行ってきますね」
「お〜 気ィつけていってこい」
先日 お登勢さんから譲ってもらったお古の着物に袖を通したAさんは、小さく敬礼をして 一人依頼へと出掛けていった。
「なんか申し訳ないですね…本当なら僕らが行くはずだったのに」
「仕方ねえだろ。こんな穴空いちゃァよォ」
今朝方 神楽ちゃんと定春が激しくじゃれあっていたせいで床に空いた大穴。そこから下を覗き込めば、下の階にいるお登勢さんと目が合ってしまった。
…今にも「とっとと塞ぎな!」と怒鳴り声が飛んできそうだ。
銀さんは、面倒くさそうに口に咥えていた釘をあてがった板切れに打ち込みながら、話を続けた。
「まァ、依頼って言っても近所の婆さんの買い物代行だ。アイツ一人でも行けるだろ」
「それはそうかも知れないですけど…」
「アイツも何かしたくてウズウズしてたし、丁度いいんだよ」
確かにAさんは働きたがっていて、常に買い物や掃除など進んでやってくれている。
一見すると彼女は働き者で周りをよく観察しているが、でもそれはきっと余計な事を考え込まないようにと彼女なりの誤魔化し方なんじゃないかと思う。
そう考えると今回の依頼に最も適任であり、任せてよかったと言える。
「銀ちゃーん、頼まれてたモノ買ってきたアル」
「そこに置いといてく……オイ、神楽。
銀さん 板切れ頼むって言わなかった?なぁ、言わなかった??」
「マダオが使ってるからこれかなって」
「なんでマダオ基準なんだよ!?
こんなんじゃ またすぐ抜けちまうだろーが!!」
Aさんと入れ替わりで買い出しから戻ってきた神楽ちゃんは、大量のダンボールを抱えている。
怒鳴る銀さんを横目に、板の代わりに当てたダンボール目掛けて神楽ちゃんはトンカチを振り下ろした。
バギッ!…と、嫌な音がしてそこを見れば、更に大きな穴がぽっかり。…ああ、やっぱりAさんに行ってもらってよかった。もしも神楽ちゃんが行っていたら大変な事になっていたかも知れない。
「ちょっと二人共! 少しは真面目に、」
────ピンポーン…
喧嘩する二人の仲裁に入ろうとしたその時 呼び鈴が鳴った。あれ、誰だろう。 まさか連日依頼が…!?
た、宝くじが当たるより珍しいぞ!
「はーい。今行きまー…」
玄関へ向かおうとした矢先に ドガン! と、何かぶち破られた不吉な音が万事屋中に響き渡った。
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おいも(プロフ) - えりぃさん» コメントを頂いてからお時間があいてしまいすみません( ; ; )少しでも神威さんの良さをお借りできたら、と思っていたのでそう言って頂けてとっても嬉しいです(´ `*)これからも楽しんでもらえるように精進致します…! (2020年9月16日 0時) (レス) id: 70decc27f6 (このIDを非表示/違反報告)
えりぃ(プロフ) - とっても面白いです!神威がカッコ良すぎます!続きたのしみにしています(ω) (2020年9月9日 10時) (レス) id: 0b16f52b12 (このIDを非表示/違反報告)
おいも(プロフ) - みさまるさん» 引き続き楽しんで頂けていてよかったです(´ω`*) 更新の度になんて嬉しいお言葉まで…( ; ; )疲れがスススッと飛んでいきました…!ありがとうございます(*´ `*)三(*´ `*) (2020年8月16日 21時) (レス) id: 70decc27f6 (このIDを非表示/違反報告)
みさまる - 更新のたびに楽しく読ませてもらっています!そして最近の展開にドキドキ(* >ω<)ヤバい〜面白いです!更新ありがとうございます!!! (2020年8月15日 21時) (レス) id: fa0a68f749 (このIDを非表示/違反報告)
おいも(プロフ) - しおりさん» ほほ本当ですか…!ありがとうございます!私もコメントを頂けてドキドキしてしまいました…!(*´ω`)少しでも一日の活力の足しになっていましたら幸いです(´ `*) (2020年8月5日 12時) (レス) id: 70decc27f6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おいも | 作成日時:2020年5月6日 18時