兎少年と六日目 ページ20
明日 神威さんが帰ってしまう。一週間という短い期間 私は神威さんと過ごす日々をいつしか当たり前のように感じていたので寂しくて仕方がありません。
でももう食費の心配をしなくていいんだなと思いました。あれ作文?な定番のくだりを昨夜から繰り返していたらいつの間にか朝になっていた。
…なんとも恥ずかしながら、早めのホームシックならぬカムイサンシックに陥っている。
「…神威さん、聞いてください。
なんと今日の仕事お休みをいただきました」
「へぇ。そうなんだ」
徳川の埋蔵金を掘り当てた時のように物凄い深刻な雰囲気を醸し出すも返ってきた反応は中々に素っ気ない。
こっちはカムイサンシック(仮)になっているというのに。あと関係ないけど埋蔵金は掘り当てたことは一度としてない。
「…。」
「何? 言いたいことがあるならいいなよ」
神威さんの返事は八割「へぇ」や「ふーん」で返ってくる。呼ぶときは決まって「ねえ」とか「あのさ」である。亭主気取りですか神威さん。私にはAって名前があるんですよ神威さん!
……あれ? そういえば、私神威さんに名前名乗っていない気がする。
「すご〜く今更なんですが、神威さん私の名前ご存知ですか…?」
「ホントに今更だね、ハナ子」
「Aです」
「ははっ、ごめんごめん。これだけ世話になった奴の名前間違えないよ、ハム美」
「Aです」
テーブルの上からメモ用紙を一枚取り、油性マジックでデカデカと自分の名前を書き綴った。
「これで次間違えたら怒りますからね。
プッチ●プリン並にプッチンしちゃいますからね」
「あ、プリン食べたい。買ってきてよ」
「神威さん!!」
「冗談だよ、冗談」
くくっ、と喉仏を鳴らして可笑しそうに笑い終えると神威さんは胡座をかいた体勢のまま此方の顔を覗き込むようにして前のめりになった。また変な名前でもつけられるのかな、と目を細めて身構えていると神威さんはコテン、と首を傾げた。
「ね、A」
「っ! へ、あ、はい」
散々人の名前を呼び間違えていたのに急にちゃんと名前を呼ばれ、素っ頓狂な声が漏れた。
女の子は不意打ちに弱いんですやめてください…!
「俺にしてほしいことある?」
「? ……?? すみません幻聴が…」
「あはは、殴れば治りそう?」
「あいたっ…!
これで治るのは一昔前のテレビだけです!」
神威さんの口からとんでもない言葉が飛び出し、耳の不調を疑えば軽く額を小突かれた。
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むー - ご、誤字りました、トリップものです! (2020年5月16日 14時) (レス) id: f9521fcd0a (このIDを非表示/違反報告)
おいも(プロフ) - プーさんさん» わ! ありがとうございます!ドキドキ…!!今作も読んでいただけて嬉しいです…!(∩´∀`)∩ またキュンキュンしてもらえるように精進します〜! (2020年5月9日 11時) (レス) id: 70decc27f6 (このIDを非表示/違反報告)
プーさん - 今回のお話もとても面白かったです!キュンキュンが止まりませんでした〜( ; ; )おいもさんほんと大好きです〜! (2020年5月9日 6時) (レス) id: 420ad2ba4b (このIDを非表示/違反報告)
おいも(プロフ) - いるあさん» わー!ありがとうございます!喜んでもらえてよかったです…!本当にいつも嬉しいお言葉をたくさん頂いてて少しでもお返しできていたらいいのですが…!(*´ `*)Twitterでもお話できるの楽しみにしてます〜! (2020年5月5日 13時) (レス) id: 70decc27f6 (このIDを非表示/違反報告)
いるあ(プロフ) - おいもさん» 追記 Twitterの件了承してくださいまして誠にありがとうございます。フォローさせていただきますね。突然リプを送らせていただく事があるかも知れません、その時は暇人なんだなぁぐらいで流して頂けると嬉しいです。※Twitterでは口調が崩れる可能性があります。 (2020年5月5日 10時) (レス) id: 19f148ae0e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おいも | 作成日時:2020年3月31日 21時