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…あぁ、やっと終わった。
通報を受けて駆けつけたお巡りさんの介入によってようやく仕事から解放され、ふらつく足取りで家路を歩く。
個人情報など聞かれたら困る面が多い神威さんには、お巡りさんが来る前に帰ってもらったがはたして大人しく家に居てくれてるだろうか。
「……なんかもう、やだなぁ」
足を止めて人通りの少ない道に蹲る。
自分の役立たずさが情けない。あの時ああすれば上手く対応できたのではないか、お巡りさんまで呼ばずに済んだのではないか。周りに迷惑をかけなくて良い方法があって、きっと店長や退職なされた先輩だったら穏便に済ませることが───。
後悔だけが頭の中を埋め尽くし言い表せない重い何かが胸を覆う。…お母さんとお父さんに会いたい。
こんなことあったんだって話して、……話してどうしたいんだろう。辛いとき二人がどんな風に聞いてくれていたか思い出せない。
「……帰りたい」
自分の家でも両親のいる家でもない、何処か遠くへ。
疲れた頭でぼんやりと浮かんだその気持ちを言葉にすれば、漠然とした寂しさが襲ってきて視界が涙で歪んでいく。
「やっと帰る気になった?」
「…?」
「待ちくたびれたんだけど」
ぐっ、と上へ腕を引かれると鉛のように重たく感じてさえいた体はいとも簡単に立ち上がり、声をかけてきたその人物を歪んだ視界にハッキリと映しこむ。
「──…かっ、神威さん…」
どうしてここに、家に帰ったはずじゃ、ずっと外にいたのかな、こんな所でグズグズしてて悪いことしちゃったな……そんないろんな感情がせめぎ合う中 ふと、帰り際スタッフの子に言われた言葉を思い出した。
"「
───あの時はただ 店内でなら喧嘩をしてもいい、と勘違いをして割って入ってきたのだと思っていた。
けど、よくよく考えれば暴れられるとわかった瞬間 神威さんならその場で相手を殴り飛ばしていそうなもので。もしかして私が殴られると思って来てくれたのかな、と思い始めれば途端に胸が苦しくなった。
「っぅ、神威さん、…神威さん……っ」
「ん」
「助けてくれて、ありがとうございます…」
「借りを作りっぱなしもなんだからね」
泣きじゃくる私を落ち着かせるように優しい手つきで頭を撫でられる。どうしようもなく苦しくて重たかった胸の辺りが軽くなるのを感じながら、少しの間神威さんの厚意に甘えさせてもらった。
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むー - ご、誤字りました、トリップものです! (2020年5月16日 14時) (レス) id: f9521fcd0a (このIDを非表示/違反報告)
おいも(プロフ) - プーさんさん» わ! ありがとうございます!ドキドキ…!!今作も読んでいただけて嬉しいです…!(∩´∀`)∩ またキュンキュンしてもらえるように精進します〜! (2020年5月9日 11時) (レス) id: 70decc27f6 (このIDを非表示/違反報告)
プーさん - 今回のお話もとても面白かったです!キュンキュンが止まりませんでした〜( ; ; )おいもさんほんと大好きです〜! (2020年5月9日 6時) (レス) id: 420ad2ba4b (このIDを非表示/違反報告)
おいも(プロフ) - いるあさん» わー!ありがとうございます!喜んでもらえてよかったです…!本当にいつも嬉しいお言葉をたくさん頂いてて少しでもお返しできていたらいいのですが…!(*´ `*)Twitterでもお話できるの楽しみにしてます〜! (2020年5月5日 13時) (レス) id: 70decc27f6 (このIDを非表示/違反報告)
いるあ(プロフ) - おいもさん» 追記 Twitterの件了承してくださいまして誠にありがとうございます。フォローさせていただきますね。突然リプを送らせていただく事があるかも知れません、その時は暇人なんだなぁぐらいで流して頂けると嬉しいです。※Twitterでは口調が崩れる可能性があります。 (2020年5月5日 10時) (レス) id: 19f148ae0e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おいも | 作成日時:2020年3月31日 21時