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「お姉さん、お姉さん」
私達の様子を伺っていた試食品販売の女性に手招かれ、辺りを見渡してから自分を指差せば女性は人当たりの良い笑みで大きく頷いた。
「よかったらお一つどう?」
そう言って差し出されたのは、こんがり焼かれたパリパリのウインナー。刺さった爪楊枝から肉汁が滴り落ち、焼きたてのいい香りに胃袋を刺激される。
受け取ったウインナーを前に、元々ハンバーグだけじゃ足りないし付け合せに何袋か買おうかな、なんて考えていると隣から物凄い視線を感じた。
「た…食べます?」
恐らく神威さんの分もいただける。けれど、その僅かな時間さえも今の神威さんは待てないだろう。
そして先に食べよう物なら間違いなく恨まれる。
ウインナーを手渡そうと少し寄せれば、それに吸い寄せられるように身を屈め、神威さんの口がウインナーを攫っていった。
え、いや、手…手は…!
解けるくらい緩く繋いでいたのでてっきり離されるかと思っていた。…つ、繋いだままこんな風に食べるなんて神威さんは恥ずかしくないのだろうか。
赤い舌先で口の端を舐める仕草を唖然と見つめる。
「ん〜
おばちゃんこれあるだけ頂戴」
「そんなに買いませんよ!」
「えー。ケチだなぁ」
「人のお財布を何だと思ってるんですか…!」
10個ください、と言えば、すかさず飛んできたのは「それだけ?」と不満を訴える声。
「ハンバーグ作らなくていいならもっと買いますけど…」
「じゃ、30でいいよ」
「すみません、10個でお願いします」
妥協するにしてはまだ多いその数は聞かなかったことにして私の要望を押し通せば、女性は微笑ましげに口元を緩ませた。
「彼氏くん、よく食べるのねぇ」
「お恥ずかしながら食いしん坊、で……」
……彼氏くん。聞き流しそうになった単語にウインナーを持つ手が止まった。
「でも、一緒に買い物なんていい旦那さんになるわね。 ふふっ まだ早い話だったかしら」
「そ、そうですねぇ」
この場で関係を否定するよりも受け流した方が良いと判断して適当な笑みを返す。
…それにしても神威さんが家庭を持つのが想像できない。家族想いな一面はあれど恋愛描写は描かれず、それを否定する
神威さんは一体どんな人とどんな恋愛をするのだろう。もしかしたら生涯独身かも…、そんなふと湧いて出てきた興味にソッと蓋をして深くは追求しないでおくことにした。
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むー - ご、誤字りました、トリップものです! (2020年5月16日 14時) (レス) id: f9521fcd0a (このIDを非表示/違反報告)
おいも(プロフ) - プーさんさん» わ! ありがとうございます!ドキドキ…!!今作も読んでいただけて嬉しいです…!(∩´∀`)∩ またキュンキュンしてもらえるように精進します〜! (2020年5月9日 11時) (レス) id: 70decc27f6 (このIDを非表示/違反報告)
プーさん - 今回のお話もとても面白かったです!キュンキュンが止まりませんでした〜( ; ; )おいもさんほんと大好きです〜! (2020年5月9日 6時) (レス) id: 420ad2ba4b (このIDを非表示/違反報告)
おいも(プロフ) - いるあさん» わー!ありがとうございます!喜んでもらえてよかったです…!本当にいつも嬉しいお言葉をたくさん頂いてて少しでもお返しできていたらいいのですが…!(*´ `*)Twitterでもお話できるの楽しみにしてます〜! (2020年5月5日 13時) (レス) id: 70decc27f6 (このIDを非表示/違反報告)
いるあ(プロフ) - おいもさん» 追記 Twitterの件了承してくださいまして誠にありがとうございます。フォローさせていただきますね。突然リプを送らせていただく事があるかも知れません、その時は暇人なんだなぁぐらいで流して頂けると嬉しいです。※Twitterでは口調が崩れる可能性があります。 (2020年5月5日 10時) (レス) id: 19f148ae0e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おいも | 作成日時:2020年3月31日 21時