平凡少女と兎少年(弐)

脱走少女とお義父さん兎 ページ1

第七師団に来てから半年余り。
最近漸く胃痛も治まり、胃にもったり負担がかかるこってり系ラーメンも食べれるまでになった。これなら神威さんや師団の人達ともなんとかやっていけている。

………つもりでした、一週間前までは。


「あの、今日も団長さんいらっしゃらないんですか？」

「団長ならついさっき出ていったな」

またお出掛け…！
不良息子並みに行き先告げずに飛び出していく神威さん。思春期なのかもしれない。

不満が表情に出ていたようで、コレかもな、と小指を立てて豪快に笑う団員さんに髪をワシワシと掻き乱された。

「失恋だな〜嬢ちゃん」

「失恋というより失業です…！」

私の任されてる作業は主に神威さん関連のもの。

しかしそれらは一週間前から頻繁に外出なされている神威さんがいない事で成り立っていない。
解雇の二文字が頭を過る。

「他の方達が話してたんですが…外で食事なさってるのは本当なんでしょうか」

「俺が聞いた話だと女とも寝てるらしいぜ」

「えっ」

新事実に声が漏れた。
まじですか神威さん。人のこと散々枕扱いして食事作り強要されていたのに、えっ。

外食されるのもどなたと寝るのも構いませんが連絡もなしにそれはいただけません…！日付変わっても待ち続けている身としては帰り遅くなるとか、………あれ？

…そういえば、私勝手に待っているだけ…！


「おっと、そういや嬢ちゃん宛に手紙届いてたの忘れてたよ」

「！ ……私にですか？」

思い出したように手渡された手紙を裏返してみるとそこにはお星様のマークが一つ記されていた。
店長には昨日近状を綴った手紙を送ったばかりなのでこんなに早く返事が届くはずがない。

…新手のダイレクトメールかもしれない。
団員さんに「ありがとうございます」とお礼を伝えてから部屋に戻り手紙の封を空けた。

中には近くの惑星から出発する地球行きのチケットが一枚。指定は明日の昼前。
同封されていたのはそれだけで詳しい事は何もなく、首を傾げる。

「星、……星マーク…？」

神威さんの一件で失業(春雨にいた者は口止めされる=死)の危機が迫っているのもあり、地球に行けるものなら行きたい。藁にもすがりたい。

(…けど、送り主のわからない物は……。)

行った先で怪しい組織に捕まったら最後…売られる。私の内臓達が売られてしまう…！

「───あ、」

過去 私が手紙を送った人達の中に一人心当たりがいた。
星マークと言えばあの人しかいない。

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