再胃痛少女と兎少年 ページ20
阿伏兎さんの背中から屋根瓦に足を下ろし、ふと暗い夜空を見上げれば、まん丸お月様が空高くからかぶき町を照らしていた。
「いいねェ、今日は満月か」
屋根に腰掛ける姿を真似て隣に座る。
二人してお月様を見上げているだけなのに気まずいといったものはなく、心地良い時間が流れていく。
何か用があって来たはずなのに阿伏兎さんは只々お月様を見つめていてばかり。私から話を切り出していいのかと勝手に解釈をして空から地へ顔を下ろす。
「…あの、お聞きしたい事が」
「団長のことか?」
「! はい。 先日お会いした時に気になったことがありまして…」
察しがいいと言うよりもこの話が来るのが分かっていたようで阿伏兎さんと視線がぶつかる。
…頭を強打したのではと疑って掛かる程に神威さんの言動は可笑しかった。一体全体どうしてしまったのか、阿伏兎さんならきっと答えを知っている。
なんたって常日頃 神威さんの隣にはハッピーセッ●に必ずついてくるおもちゃ並に阿伏兎さんがいらっしゃ──…あれ? もしかして阿伏兎さんですか。阿伏兎さんが神威さんに変なこと吹き込んだんですか。
「阿伏兎さん。最近団長さんにご自身が体験なされた女性絡みの武勇伝お聞かせになられたりとかしてませんか」
「何が悲しくて団長に昔の女の話しなきゃならねえんだ」
「ごもっともです」
ならやっぱり頭を強打して…!
いやでも神威さんがおかしくなったのに、この落ち着きようは不自然な気がする。
口元に人差し指の背を当てて悶々と考えていると阿伏兎さんから「おじさんもいいか?」と声がかかった。
「どうして無断で艦を降りた?」
「……それは…、」
空気の重さに口を噤む。
気心の知れた阿伏兎さんならある程度察しはついているはずなのにわざわざ訊いてくるというのには、何か意味がある気がしてどう答えようかと頭の中で言葉を並べていく。
「団長絡みか?」
よもや阿伏兎さんに追い打ちをかけられる日が来ようとは思わなかった。久々にお腹が刺されるような痛みに襲われる。質問はお手柔らかにお願いしたいです…!
「大きい声では言えませんがそんな感じです…」
「だろうとは思ってたが」
怒るでもなく責めるでもなく、困った様子で髪を掻くと言い難そうに口を開き「団長の事嫌いになったか?」…そう訊かれた。
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おいも(プロフ) - 紫姫さん» 最後までお読みくださりありがとうございます🐰💓 トリップにも理由があるのかも、と考えた末辿り着いた場所がちょっとしたホラーになってしまいました((🙊)) 不完全燃焼気味のラストでしたが少しでも楽しめていただけていたら幸いです🙇 (2021年9月21日 20時) (レス) id: 70decc27f6 (このIDを非表示/違反報告)
紫姫(プロフ) - まさかの結末でごっさ驚きました!!そして少し怖かったです(笑) (2021年9月19日 18時) (レス) id: eab8838b37 (このIDを非表示/違反報告)
おいも(プロフ) - カビキラーさん» 最後までお読みくださりありがとうございます(*´ω`) 以前から少し変わったお話を書いてみたかったので驚いてもらえて嬉しいです(∩´∀`)∩ トリップは色んなENDになれる楽しさがあるのでこの後二人が結ばれる世界線もあるかもです…! (2020年2月17日 20時) (レス) id: 70decc27f6 (このIDを非表示/違反報告)
カビキラー - 神威と結ばれるのかなと思ってたのでオチで驚きました!軽く怖っ!って思いました笑 (2020年2月13日 19時) (レス) id: edf3a1c316 (このIDを非表示/違反報告)
おいも(プロフ) - 氷華さん» わー!ありがとうございます…! 二人にはまた巡り会ってもらいたいので、もし続編を書く機会があればハッピーエンドにしてみたいです!(´ω`)! (2019年12月26日 19時) (レス) id: 70decc27f6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おいも | 作成日時:2019年10月16日 19時