▼ ページ39
「…もう潔く諦めませんか?」
「なら、嬢ちゃんが団長にそう言ってきてくれ」
「わっ、ちょっと離してくださ、へぶ!」
襟首を掴まれ、悪さをした猫を追い出すように部屋から追い出されてしまった。
放り出された時にお尻ぶつけて地味に痛い。
閉じられた扉をノックするも帰れ帰れとあしらわれ、その場に佇みながら考える。これから言われた通り馬鹿正直に神威さんの所に行くのも命に関わりそう。
何も聞かなかった事にして部屋に戻るのが賢い判断かも知れない。元より雑用の私には関係のない話。
阿伏兎さん、頑張って生きて帰って来てくださいね。
ダメだったら明日お赤飯炊きます、と部屋の前で手を合わせて自分の部屋へ足を進めた。
───…
目の前の角を曲がれば辿りつく自室を前に、私は奇妙な人影を目撃した。長い髪を揺らした小柄な女の子の影。
今 第七師団には私以外に女の乗組員はいないと聞いている。男の人の可能性も捨てきれないが神威さんより小柄な乗組員は私以外いない。そうなると、外部の人ということになる。
…ふ、不審者だったらどうしよう。阿伏兎さん呼ぶ?いやでも、追い返されたばかりで呼びに戻るのは気が引ける。
いっそ他の人を呼びに行こうか悩んでいると奇妙な人影が目の前まで迫っていた。
「わっぶ!」
「わぶ?…ふふっ、不思議な鳴き声ですね」
鈴のような可愛らしい声の主は、私の漏れた奇声を鳴き声と表現した。人を不快にさせない穏やかな口調と声に、洋風なお姫様がイメージとして浮かび上がる。
どんな可愛い人なんだろう? 声のする方へ視点を置き、視界にその姿を捉えた。
………。
ゴシゴシ、……ゴシゴシゴシ。
「あ、あの〜…、もしかして阿呆提督さんの…」
「はい。娘です」
や、やはり…! 娘は父親に似るとはよく言ったもので…。阿呆提督にそっくりな外見の女の子に驚いてつい目が充血するまで擦り続けた。
「よ、予定では明日団長さんとお会いするとお伺いしておりますが」
「……ええ。そうなんですが…」
重々しい空気に思わず身構えてしまう。
誰かわかる人お呼びします? 当店イチのオススメは阿伏兎さんです。因みに神威さんはオススメから程遠いい最下位になっております。
押し黙る娘さんに誰か呼んできますねと言えば、腕を掴まれてしまった。
「…あの、他の方は…」
震える声で「お顔、怖いもので…」…と、続けられた。
提督の娘さん、漫画には出てきてなかったけどこんなに常識のある方だったなんて。共感できる内容に、私がこの子の胃を守らねばと決意した。
81人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
おいも(プロフ) - いるあさん» ああありがとうございます…!!勿体無いお言葉に飛び跳ねてしまいました(´ω`)今なら木にも登れそうです!(∩´∀`)∩! (2019年10月12日 12時) (レス) id: 70decc27f6 (このIDを非表示/違反報告)
いるあ(プロフ) - とても面白いです、評価が少ないのが不思議なくらいです (2019年10月9日 7時) (レス) id: 12f9a783cd (このIDを非表示/違反報告)
おいも(プロフ) - あまいろさん» !!! お読みいただけただけでも嬉しいのにコメントまで…!ありがとうございます!5度見くらいしてしまいました(´ `*)続けて楽しんでもらえるよう精進します!L(´ω`)」! (2019年9月29日 18時) (レス) id: 70decc27f6 (このIDを非表示/違反報告)
あまいろ(プロフ) - とても面白いです!これからも更新頑張ってください!楽しみにしてます! (2019年9月29日 13時) (レス) id: 441f1e9f18 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:おいも | 作成日時:2019年4月5日 21時