目撃少女と兎少年 ページ17
箒を片手に、緑がかった空を見上げる。
…待てども待てども、神威さんがやってこない。 胡麻つき団子を作る約束を取り付けられてから
いつやってきてもいいようにとちょっとお値段の張る胃薬を常備している。が、なんの連絡もない。最近は出前の電話すらなくて店長も心配していた。
気分屋さんみたいな所もあるし飽きられたのかな。
それならそれでいいのだけども…。
「Aちゃん、ちょっと」
ひょこり、店の中から顔を出す店長の呼び掛けに短い返事を返しながら、店内へ戻る。
「どうしたんですか?」
そう訊ねると申し訳なさそうに一枚の紙を手渡された。
「急に出前が入っちゃってね…頼めるかい?」
「オーダー時間ギリギリですね…あ、もしかして」
「残念だけど、別のお客さんだよ」
うちの問題児であり太客の神威さん達はいつもラストオーダー滑り込みか過ぎてからの注文が多い。
なので、やっと連絡がきたのかと思ったのだけど違ったらしく、首を横に振られた。
まだまだ先になりそうな約束にお腹をさする。胃が痛い…。
───…
私の名前は、AA 花も恥らう18歳。
地球生まれ 日本育ちの一般市民。仕事でとある艦に出前に来ていた私は、トイレを借りてから帰ろうとしていた。
数分後 スッキリした私は、乗ってきた小型宇宙船に戻ろうとした。…しかし、その道中 白ずくめの男達の怪しい取引現場を目撃してしまった。
「手を上げろ」
かけられた声、背中に当たる硬い感触に私は静かに両手を上げた。
た、助けてLAN姉ちゃん…! こんなことになるなら、トイレによるんじゃなかった……!! 今回ばかりは己の膀胱事情を恨む。今度からはオムツを履いて出前に出ようと心に決めた。
「見なけりゃ大人しく帰れたもんを」
あ、これオムツの出番なくして死ぬやつ…!
どこでセーブしたっけ、残機あといくつだったかな。こんな時 時計型麻酔銃があれば!と 現実逃避をしていたら、手に手錠をかけられた。
「下手な真似したら殺す」
銃口を突きつけられたまま、白ずくめの男に連れられ、ある部屋の前に着く。男は、鉄製の分厚い扉を開け放つと私の背中を強く押した。
乱暴に放り込まれたせいで足取りが乱れ、這いつくばるように体は床に伏せた。
「ひっく……うぅ…」
すすり泣く悲しげな声に目を凝らす。
暗い室内に幾つもの影が蠢いていて、何かわからないそれらに恐怖心が募り、嫌な汗が背中を伝う。
暫くして暗闇に慣れてきた私の目に映ったのは、様々な容姿をした天人たちだった。
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おいも(プロフ) - いるあさん» ああありがとうございます…!!勿体無いお言葉に飛び跳ねてしまいました(´ω`)今なら木にも登れそうです!(∩´∀`)∩! (2019年10月12日 12時) (レス) id: 70decc27f6 (このIDを非表示/違反報告)
いるあ(プロフ) - とても面白いです、評価が少ないのが不思議なくらいです (2019年10月9日 7時) (レス) id: 12f9a783cd (このIDを非表示/違反報告)
おいも(プロフ) - あまいろさん» !!! お読みいただけただけでも嬉しいのにコメントまで…!ありがとうございます!5度見くらいしてしまいました(´ `*)続けて楽しんでもらえるよう精進します!L(´ω`)」! (2019年9月29日 18時) (レス) id: 70decc27f6 (このIDを非表示/違反報告)
あまいろ(プロフ) - とても面白いです!これからも更新頑張ってください!楽しみにしてます! (2019年9月29日 13時) (レス) id: 441f1e9f18 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おいも | 作成日時:2019年4月5日 21時