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「邪魔するよ」
そろそろ阿伏兎さんを帰さないとなぁと思っていたタイミングで店の扉から爽やかボイスが飛んできた。
声の主に心当たりがあるようで、阿伏兎さんはメニュー表で顔を隠すと息を潜めた。そんなバレバレな隠れ方をする阿伏兎さんの傍へ声の主はツカツカと靴底を鳴らし、近づいて行く。
「あ。やっぱりここにいた」
「ゲ…団長」
「ダメだろ? 仕事ほっぽりだして遊んでちゃ」
いやこれ凄い上司っぽいこと言ってますけど、神威さんも仕事してませんよね。阿伏兎さんから聞いて知ってますからね私達!
ああ…阿伏兎さんが遠い目をしている。
戻るかァ…と哀愁漂わせながら立ち上がる姿はもうなんかテレビでよく見る社畜のそれで。店長なんか見てられなくて手で顔を覆っている。
「あの! これお夜食にでも」
今日の夕飯にしようと取っておいたまかない飯を阿伏兎さんに差し出す。
「ありがと。 丁度お腹空いてたんだ」
いや神威さん、貴方のじゃないです。
阿伏兎さんのですからそれ返してあげてください。ほらもう阿伏兎さんも呆れて…ん?なんか不思議そうに嘘だろ?みたいな顔してる。
「団長、飯なら今日たらふく食っ…グボォ!」
「なんかいった?」
神威さんの肘鉄が阿伏兎さんのお腹にめり込んだ。
これあれですよね、の●太のもんは俺のもの、俺のものは俺のものってやつですよね。神威さんもうドラえ●んの世界でやっていけますよ。今日から貴方がジャイア●です。
「あ、そうそう。
アンタに一つ頼みたいことがあるんだけど、良いかな」
「…? はい、内容にもよりますが…」
「今度作って欲しいものがあるんだ」
「カレーですか?」
「それもいいんだけどね。胡麻付き団子、作ったことある?」
「中華レストランのデザートによくあるやつですか?」
「そうそれ」
店のメニューに胡麻付き団子は無いのだけど…。
神威さん、うちの店は頼めば何でも作ってくれる何処かの深夜食堂じゃないんですからね。前のカレーは特別なんですからね!
今日は神威さんの胃袋を掴んだ店長と保護者の阿伏兎さんと心強い二人が揃っているから控え目に断りを入れても大丈夫だろうとたかをくくる。
「申し訳ないですが、作ったことのないお食事をご用意することは…」
「いいよ。作ってない方がそれっぽくなるし」
いやそれっぽくってなんですか。
胡麻付き団子をどこのそれっぽく作れと言うんですか!押し切られるな私!頑張れ私!
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おいも(プロフ) - いるあさん» ああありがとうございます…!!勿体無いお言葉に飛び跳ねてしまいました(´ω`)今なら木にも登れそうです!(∩´∀`)∩! (2019年10月12日 12時) (レス) id: 70decc27f6 (このIDを非表示/違反報告)
いるあ(プロフ) - とても面白いです、評価が少ないのが不思議なくらいです (2019年10月9日 7時) (レス) id: 12f9a783cd (このIDを非表示/違反報告)
おいも(プロフ) - あまいろさん» !!! お読みいただけただけでも嬉しいのにコメントまで…!ありがとうございます!5度見くらいしてしまいました(´ `*)続けて楽しんでもらえるよう精進します!L(´ω`)」! (2019年9月29日 18時) (レス) id: 70decc27f6 (このIDを非表示/違反報告)
あまいろ(プロフ) - とても面白いです!これからも更新頑張ってください!楽しみにしてます! (2019年9月29日 13時) (レス) id: 441f1e9f18 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おいも | 作成日時:2019年4月5日 21時