ショコラ

我儘は愛嬌である【F】 ページ19

·






「・・・・Aさん、
後輩としてじゃなくて、一人の男として
俺のことを見てくれませんか？」





残業をしていた私を手伝ってくれた彼は、
帰り道、ふと立ち止まってそんなことを口にした。









「········藤ヶ谷くん？」



「僕と付き合ってください」







私よりも身長の高い彼のために顔を上げれば、
私よりも大人びた顔と落ち着いた雰囲気と、
もう後輩としては見れなかった。






「·······私でよければ、」



「まじすか？嬉しすぎるんですけど」






嬉しそうに幸せを噛み締めるように
優しく抱きしめてくれた藤ヶ谷くんは、
ものすごく可愛くて母性本能がくすぐられて、





「じゃあAって呼べるんですね」






なんてまた可愛ことを言いながら






“A〜”


“Aちゃーん”


“可愛いね、Aちゃん”





なんて、その帰り道も
何度も私の名前を連呼している姿が
ものすごく愛くるしかった。





・・・・が、





今なんて









「Aー！洗濯したら
乾燥かけてっていつも言ってんだろー？」





洗面所から聞こえる、
お母さんかのような母性とセクシーが入り交じった声。



・・・そのA呼びはキュンとこないんだけど。













今では、慣れ親しまれ過ぎた呼び捨て。
同居をしてはや一ヶ月。
年下の彼は、こんな彼女を持つと
しっかり者になる一方で、





「俺今日は一緒に帰れないけど、
本当に気をつけて帰ってよ？
最近危ない人多いし、暗いところは注意してね？
あ、あと鍵はちゃんと確認してね。
開けっ放しにしたら



「分かってる！！」






これじゃあ立場逆転だよ。





今日は、朝から会議の準備をする彼が
私よりも早く出勤するのだ。



私よりも先に出るからといって、
鍵をちゃんと閉めてくるかが心配みたい。



いつも通り玄関でキスはしてくれるし、
別にマンネリが起きている訳では無いが、








私達には解決しなくてはならない問題がある。


今夜、少し本人に聞いみよう。

＊→←＊

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す