こじれた愛の溶かし方。

18 ページ18

·





後日、宏光は会社にやってきた。
部長もすごく宏光のことを推していて、
会社ではあっという間に
太輔派と宏光派に分かれたぐらい
ビジュアル面でも推されている。




仕事っぷりでは二人ともトントンで、
良きライバルとしても知れ渡っているし
その二人に挟まれている私は
若干浮いている気がする。




人の懐に入ることが得意な宏光は
あっという間に社員とも打ち解けて、
なんだか私も安心したけど、







・・・一つだけ気に入らないことが。








·








·








「·······、」






プチップチッと手元のボタンを外す宏光。

ぐいっとネクタイを緩める仕草。





右から嫌でも視界に入るこの姿に
どうしても集中力を奪われる。






「·····何見てんだよ」



「······あっ、ごめん」





どうして右隣が
宏光の席になっちゃうのかな。


反対側の目の前にいる
あの太輔の席と変わってほしい。







·





「・・・たいすけぇぇっ、」



「はいはいお疲れさん」






だから、最近は定時になるたび
こうやって太輔の元へ逃げる。

きっと、これも現実逃避の一つだ。






「もうむり····、」



「もう好きなら好きでいいじゃん」



「でもね·····っ、·······！？」







ガバッと太輔との距離が引き裂かれ、
横からふわっと香るのは
私が大好きで大好きでたまらない香水の匂い。






「おっつ」






「・・・宏光、」








どかっと真ん中にいる宏光は
目をそらしたくなるほどキラキラ眩しい。







「飲みに行かね？」



「俺は用事。Aに聞いて」





太輔が喋り終わるやいなや
すぐに私へと向けられた宏光の視線は
どうしても合わせずらくて俯いたまま
いいよ、とだけ伝えた。






「・・・お前なんかおかしくね？」



「べつに····？」



「あっそ」





心配してくれてるのか分からないけど、
低く響いた宏光の声にまた胸が高鳴る。




無事終わればいいけど·····、
なんだか今日は
ちゃんと宏光と向き合える自信が無い。

19→←17

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す