こじれた愛の溶かし方。

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「·····ってぇ。まだ痛いんだけど。」


「Aの心の方が痛いよ、北山。」




あれからリビングに移動しても、
まだ痛い痛いってうるさい宏光。


まぁ、さっきの音からしたら
相当痛かっただろうね。





「で、なんでお前は
Aと一緒に寝てたわけ？」





“早く言え。”って、

宏光には厳しいよね。
結構な目付きで詰問してるし。





「寒かったんだよ。」


「毛布被ればよかっただろ？」





太輔の座る向こう側には
不貞腐れてる宏光がいて、
私はひたすら太輔の横で
うんうんって頷いているだけ。





「体温ってさ、あったけぇじゃん？」



「それがなんだよ。」



「Aの温もりを借りようかと思って。」



「気持ちわるっ。」



「·······お前、やめろよその言い方。」





でも、私が起きた時の宏光の体温は、
本当にダイレクトに伝わってきたし
正直ドキッともした。



・・・・まぁ、私だけだよね。こんなの。






「Aは嫌だった？」





確信犯かのように
宏光は首を傾けて優しく聞いてくる。


やめてよ、その聞き方。
絶対に首を横に振るしかない
その誘導拷問みたいな
宏光がする見つめ方に私は弱いから。





「······いや、じゃないけど。」


「だってよ。藤ヶ谷。」


「お前らなぁ········、」





“どんだけ距離が近いとしても、
男女ってこと忘れるなよ。”





思いっきり念押されて、
今では私も太輔の説教をくらってる。





なんだか少しだけ落ち込んで
ずっと地面を見つめていたら、
それを面白そうに、宏光はニヤニヤして見てる。

···········気づいてますけど。





「とりあえず、俺たちは帰るから。
北山は月曜からうちの会社に来るんだろ？」



「おう。」



「じゃ、その時までさようなら。」



「地味に引きずってんじゃねぇよ。」





太輔と二人して荷物をまとめて、
玄関まで見送ってもらい
エレベーターに乗り込む。




「A、忘れ物してない？」




いつもみたいに、
心配性な太輔はそう尋ねてきた。

きっと、太輔はそれも
ひとつの当たり前みたいな質問なんだろうけど、





「・・・・・忘れた。」


「え？」


「携帯、忘れた。」




また、宏光に
会いに行かなきゃいけないらしい。

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