こじれた愛の溶かし方。

16 ページ16

·






「遅いじゃん、また何かあった？」






エントランスの椅子に腰掛けていた太輔は、
私の顔を見るとそう尋ねてくる。

何回目だ、このセリフ言わせたの。






「·····何にもないです」


「北山のとこから戻ってくる時
Aってろくな顔してないよね。」








俯きながら
何も答えない私に見かねた太輔は
困ったように笑って立ち上がった。



行くぞって手を引かれると
外の冷たい風が一気に吹きつけてきて、
刺さるようなこの寒さも
今の私の状態に一致しすぎて怖い。








「たいすけ·······、」



「ん？」



「·····誰か男性紹介して？」



「お前絶対なんかあったな」






その場に立ち止まれば、
大きな手のひらで私の頬を包みんで、
顔色を伺うように覗き込んできた。





・・・宏光のことなんか
ただの友達だって流したいんだよ。

誰かほかの男性を好きになれば
いつかは時間の問題になると思うから。






「北山ってしんどい・・って顔だな。」





若干喋り方を寄せてくる太輔は、
果たして励ましたいのか
面白がってからかっているのか。




それでも図星をつかれた私は
バレないように顔を隠して歩き去る。






「ま、無理して言わなくてもいいよ。ただ
こんなこと話せんの俺しかいないだろうし、
いつでも頼れよってこと」





こんなことを言われたら、
私だって自分自身で解決するつもりだったのに。


昔から溜め込んできた
宏光の全てを無理やり押し込もうとしてたのに、









·









「ん？ほら、」




じっと救いを求めるように見つめると、
太輔は優しく微笑んで大きく腕を広げた。









「・・・・っ、たいすけっ、」


「はいはい」






早く安心したくて、
早く太輔の優しさが欲しくて。


顔を見るまもなく
私は思いっきり大きな胸に飛び込んだ。






「············たいすけっ、」


「分かったって」






背中を一定の早さでさすったり、
頭を撫でたら私が落ち着くことを知っている太輔は
ただひたすら受け止め続けてくれる。


それが、何より誰より安心するし落ち着くし、
これからもずっと、私は太輔がいないと
生きていけないんだろうなって本気で思う程。

17→←15

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す