先輩の好きなとこ。

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あれから一ヶ月が経った頃だった。
別に先輩との関係も、特に変哲もなく
変わらない愛情を受け幸せに過ごしている。

なのに、どこかまだモヤモヤしているのが事実で。
ずっと裕太と関わりがないことを言い訳に
あの日以来何も出来ていない自分が憎い。







裕太は距離を置きたいって言ってたし、
私が勝手に近づくのも自分勝手かもしれないけどさ、
しっかりと話せなかったのが心残り。
キスした裕太が悪いかのようになって、
私こそ曖昧だったことがいけなかったのに。






「······あー、もうっ」





だらだらしているのはもう終わりだよね。









「Aはもう上がり？」







悩みながら帰る準備をしていると
横から先輩が顔を覗かせた。







「·······はいっ、先輩はまだ残られますか？」



「そうだね、先に行っといてくれる？」



「·······え？どこにですか？」








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「・・・え？聞いてない？
今日会社で親睦会するじゃん」










心配そうに顔を覗き込んで、
なんかあった？って優しく眉間にしわを寄せる先輩。



そういえば朝言ってたな、
もうどうしよ、本当におかしくなってるよ私。







「·····いやっ、度忘れしてました！」


「ふは、しっかり〜」





ポン、と肩に手を置くと
“気をつけて行ってらっしゃい”
先輩はまたデスクに戻っていく。







なんだか今日は早く家に帰りたい気分だけど
仕方がない、これも仕事だよね。
こっそり自分の頬を叩いて荷物を持つと、
同じく荷物を掲げて帰ろうとしている裕太が目に入った。


・・・これって、いけってこと？







何がなんだか分からないけど
裕太の元まで走っている自分がいて、







「······裕太も、今から行く？」






バチッと目を合わせると、
一瞬驚いたような顔をして





「ん、行く？」


「·········行くっ！！」





よかった、拒否されなかった。
ちゃんと目を合わせてくれた裕太に、
ただ感極まって泣きそうになるけど
今ここで泣くのはちょっと違うし、
軽く下唇を噛んでごまかす。






行くぞって会社を出ようとする裕太の背中を
ただ小走りで追いかけた。

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