【2j3j】誘拐先は吸血鬼の館でした【ⅱ】 (ページ10)

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永遠なんてページ10

白髪に赤い瞳をした男がそう言って首に手を当てる。その言葉通り、彼の爪には赤い血が滴っていた。

彼は自らを「葛葉」と名乗った。

葛葉くんの爪は鋭く美しかった。しかもあの一撃でカルミアの息の根を完全に止めるなんて、相当強い人なのだとすぐに察せる。
葛葉くんはゆっくりと僕のことを見下ろし、顔を顰めた。

「うわ…傷ヤベエな。これちゃんと手当てしねえと、いくら吸血鬼とはいえ死ぬぞ。」

「わかってるよそれくらい…」

「とりあえず館に運ぶか。ちょい担ぐぞ。」

葛葉くんは血で背中が汚れることも構わず僕を背負うと、地面を蹴って飛び立った。
“館”と呼ぶ場所に向かう途中、葛葉が言った。

「そういえばその傷、いい感じに急所を外れてる。
もしかしたら俺が殺したアイツは、本当はお前を殺したくなかったのかもな。」

「っ……」

そんなの今更言われたところで何にもならない。
カルミアなんて嫌いだ。アイツは僕らを裏切って売ったのだから。

それなのにこの胸のざわめきは何なのだろう。僕の心をかき乱すように、それは片隅から動こうとしない。
＿＿＿僕が僕でなくなるような感覚が恐ろしく怖かった。

僕はそんな感情をかき消すように口を開いた。

「……永遠なんて、あるわけない。」