虹色レンズ (ページ31)

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15 ：bass.v ページ31

「架梛のバンドのライブ？あ～、今日の夜のやつ？」

やっぱり、こいつなら知ってると思った。
渋谷で待ち合わせをした金髪おしゃれたらしベーシストこと、フォーリミのボーカル、玄。

「玄さぁ、姉妹でやってるって知ってた？」
「知ってた知ってた。あれ、もしかして義勝知らなかったの？」
「……、知らなかった」
「Aのことだからてっきり話してるんだと思ってたんだけどなぁ」

いーや、ちっとも話さなかったね。
玄の話によれば、彼女達の本名の苗字をいじって春美しという名義で密かに活動しているらしく。
人から人への口コミだけでじわじわと広がり、知る人ぞ知るバンドだとか。
実はうちの古閑さんも声をかけたことがある、なんて話にはマジでびっくりした。

「今日のライブ、行ったりする？」
「行くよ～、架梛に駄々捏ねてバックステージパス貰ったし」
「うわ」
「いーでしょ」

駄々捏ねたってとこには引いたけど、正直めちゃくちゃ羨ましい。

「なぁ玄、マジでお願い」
「んー？」
「連れてって」
「え～、どうしよっかなぁ～」

ニヤニヤと悪ガキみたいな顔してこっちを見てくる玄の顔に思わず口元が引き攣る。
あー、これは絶対変なこと条件に出してくるやつじゃん、俺にはわかる。

「今度のツアー、全公演Aのこと連れてっていいなら？」
「げ、」
「でも義勝はAの彼氏じゃないし、仕事選ぶのはAだしねぇ」

ほら、来た。
しかも的確に痛いところを突いてくるあたり、本当いい性格してる、良くない意味で。
うるせぇな、どうせ片想いだよ。

「くくく、冗談。まぁ何箇所かはAにお願いしてるけど、他の仕事と被ったりしてて全部は無理って言われてるから。どーせKEYTALK全員行きたいとかでしょ？俺らも今日4人で行くんだよね。4人も8人も変わらんやろ」
「いや、変わるだろ」

4人と8人て、倍だぞ人数。
ほんっと悔しいけど、マジで感謝しかない。
とりあえずメンバーとのグループラインにAのライブに行ける旨を送信すれば、気持ち悪いぐらいの早さで八木氏が反応して来た。
暇かよ、八木氏。

「あ、一応お前ら楽器持って来ておきなね」
「は？」
「架梛たちのライブ、毎回何かしらあるから」

楽しそうに言い残した玄の言葉の意味が、わかるようでわからずに首を傾げる。
でも楽器持ってこいってことは、…まさか。