05 ：bass.v ページ11
大きなスピーカーから溢れるロックビートと、うざいくらいの快晴と、茹だるような暑さに、今年も夏フェスが始まったなあ、なんて。
時間までケータリングでメンバーとだらだら流すように歩きながら、目はずっとAを探している。
久しぶりに一緒の仕事だし、しかもKEYTALKの撮影に来るらしくて、よくわからない緊張と、興奮が今日まで毎日。
まぁ大型フェスとなれば来場者はもちろん、出演者も大勢いるわけで、女の子一人探すのなんて難し過ぎる。
暑さと見つからなさに何度目かわからない溜息を吐き出したとき。
「康平さんっ！」
どれだけ音や声に溢れていても、すぐに気付いてしまう声。
十数メートル先に、フォーリミの玄と康平と一緒にいる黒いバケットハットを被ったA。
やっと見つけた。
「義勝〜、A見つけた？」
「別に探してないけど」
「嘘つけ、バレバレだわ！めっちゃきょろきょろしてただろ！」
そんなキョロキョロなんてして………たかも。
メンバーにはしっかりバレていて、込み上げた恥ずかしさに うるせぇ、と一言反撃。
「あ、Aみっけ。ほら、義勝、あそこ」
知ってるわ、もう見つけてんだよ。
巨匠が指差す方向、Aの方へ目線を向ければ、楽しそうに康平と笑って、終いにはかき氷食べさせてもらってる。
康平、てめぇそれ絶対食いかけだろ。
「あー！Aが康平に餌付けされてるー！」
真っ先に声を上げたのは八木氏で、Aたち含め、何事だと俺たちに向けられる視線。
すいませんね、でもよくやった八木氏。
Tシャツ短パン野郎こと八木氏がAたちに向かって猛ダッシュ。
その後を追うように巨匠たちと歩いていけば、既に八木氏は玄と康平に喧嘩をふっかけていて、武正まで悪ノリ。
そんなみんなを夢中で写真に収めるAに、声を掛ける。
「こっちおいで、A」
カメラを離して近寄ってきたAの薄い唇から覗く舌はうっすら緑色。
やだなぁ、康平の舌とおんなじ色なんて。
「なぁに、よっちゃん」
こてん、と彼女が首を傾げればクリームイエローの毛先がふわりと揺れる。
ぱっちりした大きな瞳に真っ直ぐ見つめられてしまえば、ほんとのことなんて、何にも言えない。
「んーん、舌緑色になってんなぁって思っただけ」
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作者名：仁梛 | 作成日時：2018年6月26日 15時
