_____37話_____ ページ40
幾多の鬼を斬り殺し、疲れた呼吸を整える。エーミールの話によると、首領は最上階に篭っているらしい。全く、手間を掛けさせてくれる。
血で濡れた階段を滑らないよう注意して駆け上がりながら、ぐちぐちと文句を漏らした。最上階に近づくにつれ、鬼がだんだんと減っていった。普通は増えていく筈だろうが、これがあの首領のやり方かと思うと何となく納得がいった。
"不死の薬"の死守はエーミール、しんぺい神、軍曹に任せた。直に鬱先生達も到着するだろうから、自分は自分のやるべき事に集中することとする。
それに、と懐に入っている小さな箱を大切そうに握り締め、あの時の彼の言葉を思い出した。
『トントン、これを渡しておくけど、君には使って欲しくないな。___何故かって?だってこれを使えば、君は____』
____ごめんなさい。
目の前に聳えた黒い襖を開け、部屋に足を踏み入れた。まず目に飛び込んできたのはAの驚いた表情だった。彼女は手錠や鎖で繋がれていることは無く、ただ怯えたように隅っこで蹲っていた。
そして、いた。この戦争の首謀者が。【鬼神】の首領が。___かつての、親友が。
「___やぁ、トン氏。久しぶりだな」
「グルさん、久しぶりやねぇ」
お互いが赤い目、否、紅い目を睨み合う。
それは赤と紅が対峙しているようにも見えた。
「お前が___あの崖から落ちてもう何年経ったか、数える必要もないな。まさか鬼という存在を周りから隠しまわっていたとは夢にも思わなかったゾ」
「……もう俺は鬼やない」
「鬼じゃない?馬鹿言うな、散々人間達に忌み嫌われてきた鬼が、今更人間だとでも言うのか?」
トントンはその言葉に怒られた子供のように黙り込んでしまった。チラッとAの方に目をやると、彼女は首を横に振って首領、グルッペンの方に集中しろと口パクした。
捕まっているというのに、自分の心配をしてくれる彼女に、トントンは自分の未熟さを強く感じた。あんなに酷いことをしたというのに。
だがグルッペンの言う通り、鬼が人間になるなんてのは夢物語だ。笑わせてくれる、とグルッペンが嘆くのも仕方あるまい。
「なんでお前らは"不死の薬"を手に入れたい?」
「話題を変えるな……はぁ、単純に言えば、鬼の力を世に示したい、それだけだ」
「……何やと?」
「鬼が人間達を滅する。そして人間達は俺達と同じように忌み嫌われ、過去の過ちを悔やみながら死んでいけばいい」
口角を吊り上げ、彼は心底愉快そうに嗤った。
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あみーごー(プロフ) - 美桜さん» 更新遅れてしまってすみません……。出来るだけ沢山の方々に楽しんでもらえるよう頑張ります! (2017年3月25日 20時) (レス) id: c9fce9eca4 (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - グフッ(゜Д゜)続きが…気になる!更新期待しております!頑張ってください笑 (2017年3月25日 13時) (レス) id: 7a0b0fb690 (このIDを非表示/違反報告)
あみーごー(プロフ) - ゆうさん» 楽しんで頂けて何よりです!ありがとうございます……!頑張りますね! (2017年3月8日 9時) (レス) id: c9fce9eca4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - だんだん面白くなっていく...!!一つ一つのお話が本当に面白くて次どうなるんだ?!って楽しみになります..笑 更新頑張ってください!陰ながら応援しています!! (2017年3月7日 17時) (レス) id: d1fdd0c861 (このIDを非表示/違反報告)
あみーごー(プロフ) - 蘭菊さん» 遅れてしまって申し訳ありません……。頑張って1日1更新目指します!ありがとうございます! (2017年3月4日 7時) (レス) id: c9fce9eca4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あみーごー | 作成日時:2017年1月28日 7時