_____33話_____ ページ36
外からは、鬼やら人間やら妖怪やら分からない断末魔が聞こえてきていた。地下室は静かなうえによく響く。外からの音は一字一句聞き漏らさないというほど耳に届いてきた。
聞きたくないのに、聞こえてくる音に、Aは溢れそうになる涙を必死に堪える。耳を塞いでも、それすら許してくれないのかと嘆きたくなった。その行為は嘲笑われたかのように思えた。
「助けてくれ!」「増援はまだか!」「畜生、なんで鬼達がこんなに……」「混乱しています!早く指示を!指示をお願いします!」「撃て、撃て!殺せ!1匹足りとも逃すな!」「嫌だ、嫌だ……うわあああッ!!」
狂ってしまえば、どんなに楽だろうか。
鬼や人間達の絶叫は、鼓膜を通り越し、やがて脳に行き渡ってその光景を頼んでもいないのに映し出す。
Aは震えながら、映し出される映像にただ耐えた。もうそれは、不安な夜 稀に見る悪夢を連想させた。
「怖いよぉ……トントン……」
1人夜眠れない時、よくトントンの仕事部屋まで行っては注意されたのを思い出した。でも、その後は優しく頭を撫でてくれて、仕事をしている隣で安心して夢を見れるのだ。
本当はいつも仕事の邪魔にならない範囲で隣で眠りたかったが、いつもは流石に駄目かな、と仕方なく我慢したものだ。
あの温かい、幸せな時間。ずっと続けばいいのにと、何度夢見たことだろうか。
泣き声を殺してすすり泣いた。嗚咽も呼吸も極力我慢して、何かに耐えるように泣いた。
着物に斑点の涙の染みが作られていく。全く綺麗とは思わない斑点を見つめようともせず、赤くなる目を何度も擦った。
「こんばんは、かぐや姫。何故泣いている?」
あの男の人とよく似ている低い声。でも聞いたことがない声に俯いていた顔を咄嗟に上げた。
その人の容姿は正直に言えばとても綺麗で、思わず溜息を吐いてしまうような美しさだった。
太陽の光をそのまま浴びたかのような黄金色の金髪、吸い込まれそうな血のような紅い瞳。
「貴方は?」と訊く前に彼は微笑んで答えた。
「失礼、私はグルッペン。貴女には会いたい人がいるのだろう?そこへ連れて行って差し上げようと思ってな」
「会いたい、人?」
紅眼の彼はゆっくりと頷く。いつも隣に居てくれた大切な人を思い出して___そしてAは首を縦に振った。
紅眼の彼___グルッペンは愉快そうに嗤う。
かぐや姫が___Aが罠に掛かったとも知らずに。
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あみーごー(プロフ) - 美桜さん» 更新遅れてしまってすみません……。出来るだけ沢山の方々に楽しんでもらえるよう頑張ります! (2017年3月25日 20時) (レス) id: c9fce9eca4 (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - グフッ(゜Д゜)続きが…気になる!更新期待しております!頑張ってください笑 (2017年3月25日 13時) (レス) id: 7a0b0fb690 (このIDを非表示/違反報告)
あみーごー(プロフ) - ゆうさん» 楽しんで頂けて何よりです!ありがとうございます……!頑張りますね! (2017年3月8日 9時) (レス) id: c9fce9eca4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - だんだん面白くなっていく...!!一つ一つのお話が本当に面白くて次どうなるんだ?!って楽しみになります..笑 更新頑張ってください!陰ながら応援しています!! (2017年3月7日 17時) (レス) id: d1fdd0c861 (このIDを非表示/違反報告)
あみーごー(プロフ) - 蘭菊さん» 遅れてしまって申し訳ありません……。頑張って1日1更新目指します!ありがとうございます! (2017年3月4日 7時) (レス) id: c9fce9eca4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あみーごー | 作成日時:2017年1月28日 7時