_____31話_____ ページ34
「やーいやーい、鬼さんこちら!」
「くそ、追えっ!」
無邪気な、まるで新しい玩具を見つけた子供のような表情と声で鬼から逃げる。
得意の煽り。しかもトントンにも、堅物の教授にも溜息を疲れ呆れる程の。
頭が単純で、単細胞の奴は1番引っかかりやすい。今の現状がまさにそれ。鬼は単細胞ばかりらしい。まあ、脳が足りないんだろう。
廊下の曲がり角を曲がって、その先に敵が居ないことを確認すると、腰に装備していた青い液体が入った瓶を鬼に向かって思いきり投げつける。
瓶は音を立て粉々に砕け散り、液体は鬼にぶちまけられる。
「っ、なんだこれは!?」
「構うな、進め!殺せ!!」
刀やら槍やら色んな武器を振り回しながら鬼の兵士はシャオロンに斬りかかる。満足気に彼は微笑み、右手に持っていた愛用のシャベルで相手を後ろへと弾き飛ばす。その刹那。
激しい爆発音。爆風で火傷を負わないよう、カバーしながら後ろへ後ずさる。鬼達は絶叫していた。「熱い、熱い」「助けてくれ」、誰かが助けに来るわけでも無いのに、と内心ほくそ笑む。
これは【月の都】でしか発明されていない道具。扱いが非常に難しいため、【月の都】でも数名しか所持を許可されていない代物だ。
下手をすれば自分自身も火だるまになり、焼死する。シャオロンも幾度か挑戦してみるものの、あまり上手くいかなかったが本番で力を発揮できる有能な従者だ。
シャオロンは小声で「バーカ」と呟くと踵を返し、次の戦闘へと準備に取り掛かる。
その時、彼は油断していた。それは、気配が無かったからだ。殺気が全く感じなかったのだ。
だから、負った傷の部分を力いっぱい蹴られ、激痛に悶えるのに気付くのも遅かった。
「……あ、がっ!」
「ふー、良かった情報はしっかりしてたみたいで。ひとらんに頼んでおいて正解」
血の混じった胃液を吐き出し、痛みに耐えようと思わず蹲る。目の前にいる敵は身長が小さい桃色の瞳をした男だった。
男は不気味な鬼の面を付け、黒い着物を翻しシャオロンの苦しそうな顔を覗き込んだ。
「おー、苦しんでる。痛い?」
「お……まえ……」
浅くなる呼吸をなんとか繰り返し、目の前の男を睨みつける。一方男は冷静、否、余裕のある明るい声で挨拶をするみたいに話しかける。
そして「忘れてた!」とでも言うように本当の自己紹介を始めた。
「初めまして、ロボロって言いまーす。首領の命令なんで、全員死んでもらいますね」
その声に、感情は含まれていなかった。
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あみーごー(プロフ) - 美桜さん» 更新遅れてしまってすみません……。出来るだけ沢山の方々に楽しんでもらえるよう頑張ります! (2017年3月25日 20時) (レス) id: c9fce9eca4 (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - グフッ(゜Д゜)続きが…気になる!更新期待しております!頑張ってください笑 (2017年3月25日 13時) (レス) id: 7a0b0fb690 (このIDを非表示/違反報告)
あみーごー(プロフ) - ゆうさん» 楽しんで頂けて何よりです!ありがとうございます……!頑張りますね! (2017年3月8日 9時) (レス) id: c9fce9eca4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - だんだん面白くなっていく...!!一つ一つのお話が本当に面白くて次どうなるんだ?!って楽しみになります..笑 更新頑張ってください!陰ながら応援しています!! (2017年3月7日 17時) (レス) id: d1fdd0c861 (このIDを非表示/違反報告)
あみーごー(プロフ) - 蘭菊さん» 遅れてしまって申し訳ありません……。頑張って1日1更新目指します!ありがとうございます! (2017年3月4日 7時) (レス) id: c9fce9eca4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あみーごー | 作成日時:2017年1月28日 7時