_____22話_____ ページ25
どうしてなんだろう。
私は走っている間、疑問に思っていた。
気付いたら、そこは森の中だった。息が苦しくなる。足がじんじんと痛む。山道は歩き慣れてすらいないのに、私は何かから振り切るように走っていた。
怒った表情を浮かべたトントンが脳裏に蘇る。初めて本気で怒られた。それはいつか望んでいたことだったのに、悲しかった。
叱られるのは嫌い。でも鬱とシャオだけに叱るトントンが、私を特別扱いしているのを感じて、なんだか、悔しかったんだ。
私だって、びょうどうに叱ってほしかった。
特別扱いなんかしてほしくなかった。なのに。
『トントンなんて大っ嫌い!!』
なんて自分は我儘なんだろう。叱ってほしかったり、ほしくなかったり。
あんなこと、思っていないのに。
本当は、大嫌いなんか___。
「___あ」
着物が足に引っかかり、バランスを崩す。そのまま地面に転がって、ぐしゃぐしゃになった顔を手で擦った。
掠り傷が痛くてひりひりした。立ち上がらなきゃ、そう思って無理矢理 足を立たせようとしても、無駄だった。足が疲れて動かなかったから。
もう、完全にトントンに嫌われたかな。
だから追ってこないのかな。
『大切だからですよ、姫様が』
エーミールの嘘吐き。本当に大切なら、
「……きっと、あんなふうに怒ったりしない」
ぎゅっと着物の裾を握り締め、地面と着物には涙の染みが透明の斑点のように浮かび上がる。
___誰か、助けて。
「姫様!!」
聞き慣れた声が聞こえて、ぱっと顔を上げる。
息を切らして私の顔を心配そうに覗き込んだのは、黄金色の瞳。
「姫様、お怪我は!?ああ、ご無事で本当に良かった……」
ほっとシャオは胸を撫で下ろした。優しい視線が、私に注がれていくのが分かった。
シャオは、いつも通り私に接してくれていた。
「っ……膝を擦りむいておられますね。大丈夫です。さあ早く屋敷へ戻り」
「ねぇ、シャオ」
シャオの動きが一瞬だけ止まる。でもすぐに「どうかなさいましたか?」と私を心配してくれた。
シャオは優しいから、大好き。
「……あのね、私って」
「グルッペン?うん、見つけた。やっぱりこいつ姫様だよ」
シャオのものでも、鬱のものでも、増してやトントンのものでも無い低い声が私達の会話の邪魔をした。次の瞬間。
「がはっ……!」
「シャオ!!」
シャオが物凄い勢いで蹴り飛ばされる。
黒い着物を着て、鬼の面を被った男の人は、嗤った。
「じゃあ来てもらおうかな、姫様に」
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あみーごー(プロフ) - 美桜さん» 更新遅れてしまってすみません……。出来るだけ沢山の方々に楽しんでもらえるよう頑張ります! (2017年3月25日 20時) (レス) id: c9fce9eca4 (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - グフッ(゜Д゜)続きが…気になる!更新期待しております!頑張ってください笑 (2017年3月25日 13時) (レス) id: 7a0b0fb690 (このIDを非表示/違反報告)
あみーごー(プロフ) - ゆうさん» 楽しんで頂けて何よりです!ありがとうございます……!頑張りますね! (2017年3月8日 9時) (レス) id: c9fce9eca4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - だんだん面白くなっていく...!!一つ一つのお話が本当に面白くて次どうなるんだ?!って楽しみになります..笑 更新頑張ってください!陰ながら応援しています!! (2017年3月7日 17時) (レス) id: d1fdd0c861 (このIDを非表示/違反報告)
あみーごー(プロフ) - 蘭菊さん» 遅れてしまって申し訳ありません……。頑張って1日1更新目指します!ありがとうございます! (2017年3月4日 7時) (レス) id: c9fce9eca4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あみーごー | 作成日時:2017年1月28日 7時