_____21話_____ ページ24
色とりどりの花冠が、スローモーションのようにゆっくりと地面へ落ちていったように感じられた。幾枚かの花弁は散ってしまっていて、姫が目を大きく見開いて俺に目で訴えた。
「どうして」、そんな目だった。
「巫山戯るな!!」
いつの間にか荒れた声をあげ姫を怒鳴っていた。姫の肩が怯えたようにビクッと震える。
街の人間達もざわざわと どよめき、口々に「何があった」と視線を注ぐ。
「貴女は姫なんです。自分勝手な行動は駄目だと注意した筈でしょう!」
「違うの、トントン。私はただ」
「何が違うんです。そんなに私達に迷惑を掛けるのがお好きなのですか、姫は」
「!!そんな筈ないじゃん!」
「では何故このような行動を取るのですか!月読様も鬱もシャオも兵士達も、皆大層迷惑しているんですよ!!」
言いかけていた言葉を空中に浮かばせ、口を開いたままの姫はやがて俯くと地面に落ちた花冠をじっと見つめていた。
自分でも驚くほど大きな声が出た。後ろから数人の草履の音が近付いてきていることから、大先生やシャオロンが騒ぎに駆けつけて来たらしい。見なくてもそれくらいは分かる。
未だに怒りが治まらない俺は、拳を力強く握り締めて___そして、後悔した。
次に姫が顔を上げた時、姫の目には大粒の涙が滲んでいた。両手を胸の前に添え、でもその手は震えていた。
「私だって」
姫の第一声で我に返る。後悔してももう遅かった。姫は俺に負けないくらい大声で叫んだ。
「私だって、お姫様に生まれたくなかった!!普通の女の子として生まれたかったのに……!皆、私を特別扱いばっかりする!」
それは最早心の内に込められた本音だった。涙が、姫の頬を伝って零れ落ちる。
「なんで分からないの!この分からず屋!!
トントンなんか、大っ嫌い!!」
姫は踵を返し、走り出した。追いかけようと手を伸ばして___でも、足が動かなかった。
追いかけなければならないのに、身体が動かない。俺は、間違ったことを言ったんじゃない。
悪いのは勝手な行動をした姫だ、そう思っていたから、動かなかったのだと思う。
「……トンち、姫様追わんと」
大先生に声を掛けられても、動けなかった。
刹那、頬に痛みが走る。同時に何かが弾く音がその場に響く。
「お前は姫様の従者やろ。追わんでどうする」
平手打ちをしたのは、大先生だった。大先生の目は怒っていた。「俺が追う」とシャオロンが姫の後を追っていった。
俺は、結局1歩も動かなかった。
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あみーごー(プロフ) - 美桜さん» 更新遅れてしまってすみません……。出来るだけ沢山の方々に楽しんでもらえるよう頑張ります! (2017年3月25日 20時) (レス) id: c9fce9eca4 (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - グフッ(゜Д゜)続きが…気になる!更新期待しております!頑張ってください笑 (2017年3月25日 13時) (レス) id: 7a0b0fb690 (このIDを非表示/違反報告)
あみーごー(プロフ) - ゆうさん» 楽しんで頂けて何よりです!ありがとうございます……!頑張りますね! (2017年3月8日 9時) (レス) id: c9fce9eca4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - だんだん面白くなっていく...!!一つ一つのお話が本当に面白くて次どうなるんだ?!って楽しみになります..笑 更新頑張ってください!陰ながら応援しています!! (2017年3月7日 17時) (レス) id: d1fdd0c861 (このIDを非表示/違反報告)
あみーごー(プロフ) - 蘭菊さん» 遅れてしまって申し訳ありません……。頑張って1日1更新目指します!ありがとうございます! (2017年3月4日 7時) (レス) id: c9fce9eca4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あみーごー | 作成日時:2017年1月28日 7時