つれづれ 下 ページ21
*
ここからは俺の出番。あの頭の固い、頑固なわからず屋の父親を説得した。さすがに、いつも黙って話を聞いていた娘が飛び出したのが堪えたのか、小さな声で、「結婚でも何でも認めるから、帰ってきて欲しい」と洩らした。何だ、お前もお前なりに彼女のこと思っとるやん。通じてへんけど。
はてさて、どうしてこうも人の想いというものはすれ違ってしまうのか。
それは不器用な恋だった。
Aはもちろん、大先生もあれでいて変に臆病で、お互いがお互いの好意を感じ取ることが出来ていなかった。「まさかあの人が、」「俺みたいなやつ好きになるわけ」などと考えていたのだろう。馬鹿な奴らだ。
とは言え、失いたくないものを目の前にすれば、臆病になるのも当然だろうか。
そんなことをトントンに訊けば、「嫌味か？」と言われた。おっと、そんなつもりはなかったのだが。
・
「ぐるちゃんいらっしゃい！」
「おお、邪魔するぞ」
あれから、二人は近くのマンションで同棲することになった。お互いの生活リズムに合わせるのはさぞ大変だろうと思っていたが、難なくやっているらしい。
真っ白なカーテンが揺れる部屋で、Aは紅茶を出した。
「後悔はしてないか」
そんなこと、きっと、分かりきっている。
「してないよ。ありがとう、ぐるちゃん」
見たこともないような、晴れ晴れとした笑顔で答えた。そんな彼女の将来を、誰が心配するのか。祝福してやろう。どうか、その幸福が続くことを、永遠を願おう。祈ろう。
扉が開く音がした。玄関の方から、情けない声で「Aちゃ〜〜ん、ただいまぁ……、……えっぐるちゃん来とるん！？」と聞こえた。
インク切れ 完
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璃々衣(プロフ) - 睦月さん» ありがとうございます！ 手紙のギミックは個人的にとても気に入っているものなのでとても嬉しいです……！ お付き合いいただきありがとうございました。 (2020年11月20日 16時) (
レス) id: 6b21f4271d (このIDを非表示/違反報告)
璃々衣(プロフ) - ろやさん» ひええ……ありがとうございます。彼が幸せになった最高の世界です＾＾ (2020年11月20日 16時) (レス) id: 6b21f4271d (このIDを非表示/違反報告)
睦月(プロフ) - 文章が美しすぎて今とても心が幸せです。かきつばたの手紙のギミックがわかった時は作者様は天才だと思いました。もしかして文豪の末裔の方ですか？大好きです応援してます！ (2020年11月10日 19時) (レス) id: f6e3025c25 (このIDを非表示/違反報告)
ろや - ここは最高という名の世界ですか.........? (2020年11月5日 4時) (レス) id: 3c7753e0a3 (このIDを非表示/違反報告)
璃々衣(プロフ) - 羽瀬川さん» 当社比光の鬱先生を目指しました！お付き合いいただきありがとうございました。 (2020年7月16日 21時) (レス) id: 6b21f4271d (このIDを非表示/違反報告)
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