苦笑 ページ7
「別に返事が欲しい訳じゃない。
何となくAの態度で伝わってるし、
ここでとどめを刺されたら立ち直れない」
空になったビアグラスを弄びながら
翔くんの苦笑いが止まらない。
「さっきの男前の囲碁棋士って、
Aや二宮とよくテレビに出てる奴だろ？
いつ見ても仲良さそうで、楽しそうでさ、
俺には分からない囲碁の話も分かり合ってさ
付け入る隙がないって感じ。羨ましい限り」
「ねえ、嘘でしょ？嘘よね？」
「嘘じゃないって言っただろ」
私の白ワインにも手を伸ばした翔くん、
空にしてしまった。
「さ、帰ろう。不満だろうけど送るよ。
奴の代わりにはなれないけど、諦めろ。
あ、その金は使わないからな。
Aが持っとけばいいじゃん」
海堂さんが置いて行ったお札を握らされて
ちょっと乱暴にコートを着せられて、
背中に添えられた手にそっと押されて
お店を出た。
「寒いな」
「冬だもん」
結局そんな会話しかできないなんて、
私の勝負勘は、恋愛には向かないらしい。
分かっていたけど、今夜は身に沁みて辛い。
タクシーがマンションの前に着いて、
一人で降りてエントランスに入る。
翔くん、次の約束を言い出さなかったな。
再会してからは、毎回、約束してたこと、
私だってちゃんと分かってたんだけどな。
−好きだって思ってたよ、ずっと−
今もだよって言ってたけど過去形だった。
もう違うと言われたのと同じことよね？
「近所の幼なじみ」枠から出ることもせず
手を伸ばさなかったのは、私の方だったね。
幼なじみ相手にでも、異性を誘うのは
きっとそれなりに決心が要るはずなのに
気づかない振りをして毎回試していた私は
結構な卑怯者だった、ごめんなさい。
勝負なんかじゃなく、馬鹿な思い上がりに
悲しむ資格もないって思うわ。
獲りに行かなければ失う。
誰かの手に渡る。
そんな当たり前のことを今さら実感して
一人の部屋で唇を噛みしめるなんて最低。
海堂さんの信頼と翔くんの想いの両方を、
今日、失ったんだと思い知る。
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おはな(プロフ) - ともさん» 彼の変化に戸惑わせてしまったようで、申し訳ありませんでした。その理由を彼の言葉の中に含めたつもりでしたが、やはり力不足でした。努力しようと思います。ご指摘頂きありがとうございました。 (2021年4月3日 18時) (
レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
とも(プロフ) - 急に紳士な翔くんにちょっと驚きが隠せてないですが（笑）昔話を楽しんでいる2人がとても心地いいです。 (2021年3月28日 9時) (レス) id: bd0ebe94fc (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - たまりんさん» たまりんさん、お返事が遅くなってしまってすみませんでした。年月を経ても想い続けた二人の一途さ、もう一息で願いが叶うところまできました。ホッとしています。辛い時間が長かったですよね。純粋だとシンプルになって飾らない言葉が嬉しい。伝わって良かったです。 (2021年3月27日 20時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - ていくさん» ていくさん、まずは、お返事が遅くなってすみませんでした。この更新分では、彼がひたむきに語ってくれたので私的にはほっとしたところです。時間は要しましたが、饒舌な言い訳と圧倒的な言葉不足、陥り易い間違いに気付けて良かった。この後もお越し下さると嬉しいです (2021年3月27日 20時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
たまりん(プロフ) - おはなさん更新お疲れ様です。やっと、やっと翔くんと通じ合えた。気持ちではあの頃と同じ様に2人は想いあっていたけど、若さゆえなのでしょうか。どこかでやり直しがきくと思っていたのでしょうか。大人になった今だからこそ飾らない言葉が相手に届くと思いました。 (2021年3月20日 7時) (レス) id: 73cb3c7af7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おはな
| 作成日時：2021年2月7日 0時
