炎 ページ21
「だからね、今こうしてAといるだけで
舞い上がるほど嬉しい、マジで。
そして話を聞いてくれてるんだから、
夢みたいだって思うよ、ありがとう」
握りしめた手の指を絡めて繋ぎ直して
引き攣れた笑顔を見せる翔くん。
信じようと思えないまま表情を失くす私。
二十歳前の幼い、だからこそ強い想いを
未だに整理し切れない未練がましさ。
未分化で純粋で容赦のない感情の激しさ、
必要とされるなら何だってできる潔さ。
全部よ、全部、覚えてるの。
悲しくて悔しくて、とても求めていて
叶わないと分かった途端の絶望。
「偶然の再会を俺はラッキーだと思ってる。
慌てちゃって上手いこと言えなかったのは、
嬉し過ぎたからだって信じてもらえない？」
離れようとする私にあなたの五本の指が
痛い位に強く絡んでくる。
「諦められなかった。
テレビとか囲碁関係の雑誌や新聞で
Aの近況をいつも気にしてた。
再会の時、友達の結婚式の帰りだったから
Aだって結婚しちゃうじゃんって思って
すっごい焦ったんだ」
「あの時も千秋さんと一緒だったじゃない」
そうよ、彼女の荷物を持ってあげてた感じは
長いお付き合いが伺われるカップルだった。
どこからどう見ても美男美女でお似合いで
隙がなくて、昔と変わらなくて。
「私、言ったでしょ？
身を引いてあげた私に感謝してよって。
あれはあれで本当の気持ちだった」
翔くんが口を引き結ぶ。
低く唸り声が聞こえた気がする。
「覚えてるよ、正確にね。
相変わらず千秋と仲がいいって言われて
時間が経ってもAの傷は残ってるって
申し訳ない思いだった。済まなかった」
「こう言うと他力過ぎちゃうんだけどね、
親達も定年で仕事上の関係がなくなったから
付き合いが減ってるんだ。
あの日は確かに一緒だったよ、でもね、
お互いの家族と集まることはなくなって、
普通の先輩後輩の関係になってるんだ」
饒舌な言い訳って胡散臭い。
説明の形になってるとは言え、言い訳よね？
胸の奥で暗い炎がちりちりと燃える熱さを
じっと耐えている。
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おはな(プロフ) - ともさん» 彼の変化に戸惑わせてしまったようで、申し訳ありませんでした。その理由を彼の言葉の中に含めたつもりでしたが、やはり力不足でした。努力しようと思います。ご指摘頂きありがとうございました。 (2021年4月3日 18時) (
レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
とも(プロフ) - 急に紳士な翔くんにちょっと驚きが隠せてないですが（笑）昔話を楽しんでいる2人がとても心地いいです。 (2021年3月28日 9時) (レス) id: bd0ebe94fc (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - たまりんさん» たまりんさん、お返事が遅くなってしまってすみませんでした。年月を経ても想い続けた二人の一途さ、もう一息で願いが叶うところまできました。ホッとしています。辛い時間が長かったですよね。純粋だとシンプルになって飾らない言葉が嬉しい。伝わって良かったです。 (2021年3月27日 20時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - ていくさん» ていくさん、まずは、お返事が遅くなってすみませんでした。この更新分では、彼がひたむきに語ってくれたので私的にはほっとしたところです。時間は要しましたが、饒舌な言い訳と圧倒的な言葉不足、陥り易い間違いに気付けて良かった。この後もお越し下さると嬉しいです (2021年3月27日 20時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
たまりん(プロフ) - おはなさん更新お疲れ様です。やっと、やっと翔くんと通じ合えた。気持ちではあの頃と同じ様に2人は想いあっていたけど、若さゆえなのでしょうか。どこかでやり直しがきくと思っていたのでしょうか。大人になった今だからこそ飾らない言葉が相手に届くと思いました。 (2021年3月20日 7時) (レス) id: 73cb3c7af7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おはな
| 作成日時：2021年2月7日 0時
