反則 ページ11
出かけ際に手にした携帯が震えた。
タイミング良くメッセージをくれたのは、
世界で一番気まずい相手だった。
−そろそろ家を出る頃だろ？
東京駅まで車で送るよ、降りておいで−
何もなかったかのような言葉に驚いたし、
私が金沢に行くことを知っていることに
もっと驚いている。
どうして知ってるの？
しかも出発の時間を知ってるのは、なぜ？
−反則だって思うだろうけど、
美琴から聞き出した。ごめん−
ああ、確かに。
昨夜、美琴と電話で話していた時に、
妙に詳しく聞かれるなあって思ったわ。
翔くんに頼まれていたんだ、そうなの。
美琴って翔くんには、相当厳しいんだけど
一体どうしちゃったんだろう、
何か、心境の変化があったのだろうか。
ともかく、エントランスまで来ているなら
帰れとも言えないし、無視もできないし
送ってもらっても不自然じゃないよね？
−ちょうど家を出るところだった。
今、降りるわ−
素っ気なく返したのは、様子を伺うため。
翔くんがどんな気持ちで来てくれたのか、
教えてくれるまでは油断ができないから。
失ったと思って諦めかけていた想いの輪郭が
はっきりし出すのを感じている。。
送るって来てくれたのって期待していいの？
それとも決定的な言葉が待っているの？
どちらにしても勝負に赴く大切な時間だから
背筋を伸ばして動揺を最小限に抑えないと。
６年経った今、強くなった自分を信じたい。
窓の鍵を確認し、部屋の明かりを落とす。
玄関で移動に楽なローヒールを履き、
一度深呼吸してからドアを開けた。
何を話せばいいのか、いけないのか、
あまり整理はできていないけれど、
それも今さらだって思ったりする。
どっちにしても翔くんとはいつもぎりぎりで
どう転ぶのか一瞬先も読めやしない。
ゆっくり下るエレベーターの中でも
戸惑いは続く。
どう向き合うのが正解なのかと迷う。
そして。
開いた扉の先に、冬の陽射しを浴びて
壁にもたれた足の長いシルエット。
だめだなあ、失うなんて耐えられない。
光の粒が全部あなたに集まって見えるのは、
もうとっくに答えが出てるからなのにね。
再会が、過去のおつりでなくなるように
彼はこうして来てくれたんだと直感する。
再会の瞬間、彼が彼女といたことは事実、
でも私と会った偶然だって事実。
気持ちが引き締まる。
私は私の想いを譲らない。
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おはな(プロフ) - ともさん» 彼の変化に戸惑わせてしまったようで、申し訳ありませんでした。その理由を彼の言葉の中に含めたつもりでしたが、やはり力不足でした。努力しようと思います。ご指摘頂きありがとうございました。 (2021年4月3日 18時) (
レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
とも(プロフ) - 急に紳士な翔くんにちょっと驚きが隠せてないですが（笑）昔話を楽しんでいる2人がとても心地いいです。 (2021年3月28日 9時) (レス) id: bd0ebe94fc (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - たまりんさん» たまりんさん、お返事が遅くなってしまってすみませんでした。年月を経ても想い続けた二人の一途さ、もう一息で願いが叶うところまできました。ホッとしています。辛い時間が長かったですよね。純粋だとシンプルになって飾らない言葉が嬉しい。伝わって良かったです。 (2021年3月27日 20時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - ていくさん» ていくさん、まずは、お返事が遅くなってすみませんでした。この更新分では、彼がひたむきに語ってくれたので私的にはほっとしたところです。時間は要しましたが、饒舌な言い訳と圧倒的な言葉不足、陥り易い間違いに気付けて良かった。この後もお越し下さると嬉しいです (2021年3月27日 20時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
たまりん(プロフ) - おはなさん更新お疲れ様です。やっと、やっと翔くんと通じ合えた。気持ちではあの頃と同じ様に2人は想いあっていたけど、若さゆえなのでしょうか。どこかでやり直しがきくと思っていたのでしょうか。大人になった今だからこそ飾らない言葉が相手に届くと思いました。 (2021年3月20日 7時) (レス) id: 73cb3c7af7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おはな
| 作成日時：2021年2月7日 0時
