原則 ページ19
再会と言ったって
偶然に過ぎなくて意図したものではない。
連絡先を知りたいと言われたことも、
あの時点では、社交辞令だった可能性もある。
そもそも千秋さんと仲良くお出かけしていて
通る人たちの注目を集めるお似合いの二人。
千秋さんがキー局の女子アナである上に、
隣に王子様のような翔くんがいたんだもの、
華やかで艶やかでため息だって出てしまう。
駅前で会ったのも、ただの偶然だった。
取引先が多くあるエリアだからってだけ。
食事したお店も私の好みではあったけど、
カジュアルで気取らない雰囲気のお店で
例えばあのホテルのようなゴージャスさも
特別感も全然なかった。
“あの頃の辛さが報われたような気持ち“
なんて思ったりして冷静さを欠いていた。
勢いで連絡先や住んでいるマンションまで
あっさりと教えてしまったなんて。
“いつまでも過去にこだわっていても
幸せになれないじゃない？“
“翔くんも好きな人と好きなだけ一緒にいて
幸せになったらいいのよ“
美琴にそう言ったのは、私自身だったのよ、
忘れちゃだめじゃないの。
一手を積み重ねて、百、二百と打っていく、
そのどれも無駄はなく咎められては負ける。
私は、そういう世界で生きているのに
偶然ごときに甘く期待してしまったなんて。
こんなに悔しさを感じたことは、ない。
「A？どうした？
今日は、まっすぐ帰るか？」
優しい方の二宮さんが甘い声で言う。
そんな風に優しくされたら泣いてしまう、
今日の私は、絶対に。
だから、努めて明るく返事をした。
「とんでもない、教室に戻ります。
だって今日の内に振り返らないと、
今までの努力が無駄になっちゃいそうだし、
二宮さんがレクチャーしてくれるんでしょ？
しかも、無料で！」
「誰が無料って言ったよ！
でもまあ、今日は仕方ないか。
その代わりガチだからな、覚悟しとけ。
タダより高いものは、ないって言うだろ」
「はーい、頑張りまーす」
「よし、大野さんのパン屋に寄ろうぜ。
それくらいご馳走してやるよ」
雨か雪か、はたまた槍が降るかもしれないと
いつもの言い合いをしていて流れた涙を
笑ったせいだってことにして拭う。
千秋のいない世界には、翔くんもいない。
分かり切った原則を思い出して、意識して
私は、私の世界で生き、負けずに進む。
忘れてはいけない、軽んじられたことを。
彼の部屋で見た、彼女の長い膝下を。
双方の家族の中で親しげに振舞う二人を。
あなたの視線の先に、彼女がいたことを。
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おはな(プロフ) - mayuさん» mayuさん、楽しみと言って頂けることに安堵しました。そうですよね、素っ気なく離れて行った彼、また近づいてきた彼の真意を書かなくては。時間がかかってしまいそうですけど、またmayuさんに来て頂けるようがんばりますね。 (2021年2月2日 20時) (
レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - さる子さん» さる子さん、こちらこそ感謝の気持ちでいっぱいです。テンポよく更新できていた頃の感覚がなくて、愚痴の様なコメントを残してしまいました。彼の真意に辿りつくまで、しっかり書いていきますね。ありがとうございました。 (2021年2月2日 20時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - たまりんさん» たまりんさん、少しペースは落ちているところ、コメントを頂きありがとうございます。彼の行動の一つ一つに意味があり狙いがあり、気持ちがあるのはもちろんです。それを何とかお話に乗せられるよう頑張りますね。 (2021年2月2日 20時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
mayu(プロフ) - おはなさんの書くお話、言葉も、繊細な心の動きも丁寧に書かれていて、面白いです。翔くんは一体どうしたいのか続きが楽しみです！ (2021年1月31日 9時) (レス) id: 862aa3f0aa (このIDを非表示/違反報告)
さる子(プロフ) - ぜんぜん！がっかりなんて！楽しみにお待ちしておりました。おはなさんのペースで更新してけだされば。彼の真意を想像しながらまっていますので。更新に感謝です。 (2021年1月31日 2時) (レス) id: eb4a575f23 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おはな
| 作成日時：2020年12月25日 23時
