シルエット ページ5
美琴は、翔くんのご学友たちと
繋がりをずっと保っていて
私を拒絶した絆の強さは相変わらず。
「櫻井は、未だ結婚してないよ。
男は３０過ぎてからって思うんだってさ。
本当、相変わらずよ。
高級そうなスーツが似合って似合って
嫌味な程だったわ」
「でしょうね、目に浮かぶわ」
何気なくそう言った私を呆れたように見て
美琴は、盛大なため息を吐いた。
「A、まだ振り切れてないよねえ。
一体いつになったら次の世界に行けるのよ。
だって保育園児の頃からでしょう？
いい加減、自分を解放したらどうなの」
「そうなのよねえ」
「まったく、不器用なんだから・
でも、そこがいいいのよ、Aは」
「ありがと」
最近、誰かに同じことを言われた気がする。
これは、褒められてる訳じゃないだろうと
まあね、分かってはいるんだけど。
「不器用って言うか、強情なんだと思うの」
「そうとも言うわね」
美琴は良く分かってくれていて
今でも美琴が男性だったらいいのに、とか
何とかして結婚できないかな、とか
馬鹿なことをふわっと思ったりする。
６年経っても進歩してないなあ。
対局の解説が終わり、帰りを急ぐ父と別れ
何となく一人になりたかった私は、
華やかなクリスマスのイルミネーションの中
坂道を昇り、下り、大きなツリーが飾られた、
有名なホテルの前に着いた。
「ちょっと温まっていこうかな」
珍しくホテルのカフェに一人で立ち寄った。
テーブルの間隔が適度に開いていて
たくさんの人がいるのに騒がしくなく。
特選のダージリンをポットでオーダーして
今日の対局の感想を手帳にまとめる。
こういう時間に思考が整理できて
自分の傾向を知り、分かったりする。
ポットの紅茶、二杯目も飲み干した時
視界の端に影を捉えた。
どうしても、気付いてしまうその影。
それは、懐かしくて切なくて、
大好きなシルエットが横切る。
どくん、と心臓が打つ音を聞く。
指先から血が逆流する。
全ての感覚が影を追って行く。
ああ、でも。
でも、やっぱり。
あなたの視線の先に、あの人がいる。
その笑顔を見てしまった途端、
目を固く閉じた。歯を喰いしばる。
私は、まだ、諦められてない。
呼吸を止めて、震えを抑える。
気付きたくなかった。
気付きたくなかったよ、翔くん。
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おはな(プロフ) - mayuさん» mayuさん、楽しみと言って頂けることに安堵しました。そうですよね、素っ気なく離れて行った彼、また近づいてきた彼の真意を書かなくては。時間がかかってしまいそうですけど、またmayuさんに来て頂けるようがんばりますね。 (2021年2月2日 20時) (
レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - さる子さん» さる子さん、こちらこそ感謝の気持ちでいっぱいです。テンポよく更新できていた頃の感覚がなくて、愚痴の様なコメントを残してしまいました。彼の真意に辿りつくまで、しっかり書いていきますね。ありがとうございました。 (2021年2月2日 20時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - たまりんさん» たまりんさん、少しペースは落ちているところ、コメントを頂きありがとうございます。彼の行動の一つ一つに意味があり狙いがあり、気持ちがあるのはもちろんです。それを何とかお話に乗せられるよう頑張りますね。 (2021年2月2日 20時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
mayu(プロフ) - おはなさんの書くお話、言葉も、繊細な心の動きも丁寧に書かれていて、面白いです。翔くんは一体どうしたいのか続きが楽しみです！ (2021年1月31日 9時) (レス) id: 862aa3f0aa (このIDを非表示/違反報告)
さる子(プロフ) - ぜんぜん！がっかりなんて！楽しみにお待ちしておりました。おはなさんのペースで更新してけだされば。彼の真意を想像しながらまっていますので。更新に感謝です。 (2021年1月31日 2時) (レス) id: eb4a575f23 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おはな
| 作成日時：2020年12月25日 23時
