願い�� ページ32
海に近い道を走る。
遠くの工場と空に伸びるクレーン、
大きな客船、高層ビル、細い月。
あなたのハミング、私のローズ。
長い序曲の終わりを意識していて
その瞬間をただ待っているような。
でも手繰り寄せたいような。
目的のないドライブは１時間ほどを費やし、
また都会に戻っていく。
「そろそろ向かおうと思ってるんだけど
予約したのはね、誰とも一度も
行ったことがないレストランなんだ。
この歳にもなれば記憶も想い出も、
お互い随分と残ってるだろ？
そういうの、全部邪魔だと思ってさ」
うん、言いたいこと、分かるわ。
「だから、Aが知っている店だとしても
今日だけは知らない振りしてくれないかな。
俺のプランに乗っかってくれると助かる」
そんな弱気なことを聞きながら車を降りた。
でも促すように背中に添えられた手には
しっかり力と温度が感じられる。
弱気なんかじゃないくせに、お上手ね。
「私、何度も前を通ったことはあるけど
このお店には来たことがないわ。楽しみ」
「まじか。良かった、ほっとした」
超がつくほどの有名店でも、
何故か今まで縁がなかったのよね。
案内されたのは、窓が大きな広めの個室。
眼下に広がる都会の夜と少し降りた月、
所々ライトに照らされた木々の緑は
それぞれに色を変え、広がっている。
ふたりきりのテーブルに向かい合う。
緊張が伝わって、数分の沈黙。
「えっと、見事なロケーションね」
「だな、リサーチ通りだ。
まあ、とにかく料理を楽しもう」
それはそれは、豪華なお食事が始まった。
本マグロにキャビアが添えられていたり
フォアグラのソテーには赤ワインのソース、
最高級ランクの白トリュフのパスタ、
メインの仔牛のソテーにも白トリュフ。
至福のコースと名付けられたのも頷ける。
緊張で味が分からないかもといった心配は、
全くの無用だった。
「ここまでたっぷりと白トリュフを堪能して
他のお料理も素晴らしいなんて。
美味しいって言葉以外、出て来ないわ。
翔くん、連れて来てくれてありがとう。
本当、幸せな気分よ」
「そうか、満足してくれたんだ。
良かったあ、俺も満足だよ」
ワゴンで運ばれてきたドルチェ、
迷いながらこの先を探る。
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おはな(プロフ) - mamoさん» mamoさん、嬉しいコメントをありがとうございます。しょげて凹んで（少々憤って）混乱しますけど、していますけど。辛い恋は女が生きている証、なので、突き進みます。前だけではなく上を向きます。私、意外とタフなので懲りないんです。書き続けることで次に向かいます (2020年1月21日 23時) (
レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
mamo(プロフ) - おはなさんお返事ありがとうございます。お話を読んで辛い事などありません。こういう事がある度に大好きな書き手の皆さんの更新が途絶え、葛藤されているのだろうとその事に胸を痛めています。おはなさんの更新にとても励まされています。お話楽しみにしてます！ (2020年1月20日 2時) (レス) id: bdd1fe01f6 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - sachiさん» お久しぶりです。コメントを頂きありがとうございます。恋をすれば愚かにもなりますよね。それだけ純粋なんだと思います。この先への不安はありますし怖いとも感じます。それでも。好きなんだから仕方ないし。求められるのであれば応えたい。それだけです。 (2020年1月19日 21時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - たまりんさん» 邪気を振り払い、純粋な想いだけを大切に守っていきましょう。想いだけなら誰にも何にも負けません。癒しと言ってもらえるなら喜んで書き続けます。辛いし悲しいですけど私は案外タフなようです。このまま続けます。ありがとうございました。 (2020年1月19日 21時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - あきこさん» あきこさん、お辛い中でコメントを頂きありがとうございます。どうしてこう、辛いことが降ってくるのか、納得できませんけど。この複雑な想いを書いてしまいたいとも考えたりしています。過去に書いた真珠のお話のように。まずはこのお話を完遂すべく頑張ります。 (2020年1月19日 21時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おはな
| 作成日時：2019年12月15日 0時
