スキル�� ページ28
午後三時の５分前、
マンションのエントランスを出る。
やっぱり、ね。
白地に細い黒のストライプシャツに
タータンチェックのジャケット、
濃紺のストレートパンツは少しだけ細めで。
すっきりとした休日ファッションの彼が
車に寄りかかって待っていてくれた。
「ん、時間通りだな、よしよし」
「翔くんも、時間通りで、よしよし」
好きだなって思う男性と話す時って
意識していないのに唇に力が入る。
いつも以上によく動いているのが分かって
緊張の現れなのかもしれないと思っている。
今も、そう。
今も。
つい、数週間前、大野さんに会った時も。
すうっと体温が下がったようになって
同時に私は表情を失くしたんだろう。
助手席のドアを開けたままの翔くんが
心配そうな視線を向けている。
「どうした？元気ない？」
私の中のつまらない罪悪感が
翔くんの笑顔を曇らせてしまった。
それも重ねて切なくて急に瞳が潤む。
「何でもないの、私、元気よ。
今日は、すごく楽しみにしてたんだから」
もう一度、本心を告げて笑って見せる。
目尻に涙が滲んだけど、それは無視して。
お願い、伝わって。
やめようなんて言わないで。
願いが通じたんだろうか、
翔くんも、一瞬の躊躇の後で
ゆっくりと笑顔に戻った。
「そっか、なら良かったよ。
久しぶりにゆっくり話せると思って
俺も楽しみにしてたんだ、実はさ」
ほれって促されて助手席に滑り込み、
運転席に回った彼を見上げる。
いつもより強く香る彼のシトラスは
夜になる頃にはスパイシーなムスクに変わる。
爽やかで、甘くて、強い。
「気分悪くなるようなら、
遠慮しないでいつでも言えよ。
今日の主役は、Aなんだからさ」
「どうかなあ、本当かなあ。
翔くん、優しそうで厳しいからなあ。
甘えるなって怒られそうな気がする」
エンジンをかける前の横顔に言ってみる。
口元が笑ってしまうのは抑えられなかった。
「なんだよ、こら。
お祝いって言っただろ？
今日はちゃんと女子扱いしてやるから
好きなだけ甘えとけ」
驚いて嬉しくて、ときめいて、
私は黙って頷くだけだった。
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おはな(プロフ) - ささたくさん» 色の意味は、そこまで執着していなかったこともあり、秘めておこうと思っていました。気付かれてしまいましたね。彼の大人の魅力を書けると良いなと願いながら進めようと思っています。お付き合いくださいね。ありがとうございました。 (2019年12月14日 17時) (
レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - mikkyさん» mikkyさん、スキルを細かに使っていこうかと思っております。とは言え、私にそこまでの蓄えはないので、早々に方向転換する可能性もあり自分でもヒリヒリしながら書いています。彼の大人加減と優しさを頼りに進めますね。ありがとうございました。 (2019年12月14日 17時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - 花音さん» 花音さん、コメントをありがとうございました。「追いかけて行く」、私もまさにそんな気持ちでいます。私が書くものは、どうしても彼中心で、読んで下さるのもきっと彼担当の方がほとんどだろうと思っています。なのでとても嬉しかったです。励みになりました。 (2019年12月14日 17時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
ささたく(プロフ) - ロイヤルブルーのセットアップですか。色にも意味がありそうで、深読みしてしまいました。爽やかで、甘くて、強いって、彼そのものですよね。色々と楽しみながら読みました。次の更新も楽しみにしています。 (2019年12月12日 1時) (レス) id: 0cad052d81 (このIDを非表示/違反報告)
mikky(プロフ) - 更新ありがとうございます^ ^女のスキルを駆使してきましたね。少しでも翔さんに伝わっています様に...。そして今日の彼も素敵でした。またの更新待ってます^ ^ (2019年12月12日 0時) (レス) id: 27e731af2f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おはな
| 作成日時：2019年11月16日 2時
