擁護 ページ30
「間違ってますよ、先生。
それに彼女から離れてください。
気分が悪いんで」
地の底から響くような低い声がして、
だってそれは愛しい人の声で、
ここにいるはずない人で。
期待にすがる想いで振り返った。
さっと腕から引き寄せられて
翔さんの濃紺の大きな傘に覆われた。
一気に緊張が解ける。
来てくれていた。
その事実が私を強くする。
「迎えに来たよ、A」
そして優しく見つめる瞳。
腕から滑り降りた手が
私にその傘を渡した。
ちょっと持っててねって。
「福岡では彼女がお世話になりました。
連れ帰って頂いて助かりました。
直接、お礼が言いたかったので
お会いできて良かった。
ああ、これ、長野土産です。どうぞ」
打って変わっていつもの声で
翔さんが信玄餅を渡している。
そのために私に傘を預けたんだわ。
貼り付けたような完璧な笑顔で
小田切先生を正面から見ている。
「来月からまたよろしくお願いします。
では、お疲れ様でした。
ほら、Aもご挨拶して」
慌てて私もご挨拶した。
「あの写真はどうするつもりだ、櫻井」
「お好きなように。
彼女が言ったように心が通っていないなら
全く意味の無い行為ですし、
品の良い趣味とは言えませんし。
それともご結婚される方に
僕からお見せしましょうか？」
小田切先生は、もう何も言わなかった。
「帰ろう」
「うん」
私の車に翔さんを乗せて実家に向かう。
雨が強くなった。
ワイパーの音がやけに大きく感じられて
それで翔さんが無口になったと気づく。
纏う空気が冷たい。どうしよう。
やっぱり写真のことを思い出して、
怒ってるのかな。
「あのさあ！」
今日二回目の地の底から響く低い声。
「すげえムカついたんだけど。
腸が煮えくり返るって、
こういうことを言うんだな。
もう二度と嫌だ。
Aが男と二人でいるってだけで
充分嫌だって言うのにさあ、
何だよ、相合傘って！」
え？そこ？
「もう本当に嫌だ。
A、一度実家に帰ってから、
俺んとこに来いよ。
一晩中、癒してもらうことにする」
一晩中って。やだ。
「返事は？」
「はい。あの、お手柔らかにお願いします」
次の信号で止まった時、
首の後ろから引き寄せられて
合わせた唇から入り込んだあなたが
ぐるんと口腔を撫で回して出て行った。
これは、覚悟しないと。
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おはな(プロフ) - いちこさん» いちこさん、いつもコメントをありがとうございます。本当にね、最近の彼はヤバいですよね。大人で紳士でクレバー、少し天然。魅力が大爆発で悶える毎日です。妄想を越えてくるので、大混乱してしまってます。何とか近々更新しますので、またお越しくださいね。 (2018年11月2日 18時) (
レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - ささたくさん» ささたくさん、コメントありがとうございます。幸せな時間をお届けできて良かったです。甘くて穏やかで、ほんの少しだけビターな会話、楽しんで頂けたでしょうか。こなれていく関係性を表せていたらいいなあと思っています。 (2018年11月2日 18時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - mikkyさん» mikkyさん、コメントありがとうございます。過去は変わらないですからね、囚われる時間は短い方が良いに決まってます。乗り越えて飲み込んで、この夜は抱き合っちゃえばいいんだと思います。ツアー前のビジュアルに身悶えする秋です。御身お大事に。 (2018年11月2日 18時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
いちこ(プロフ) - 毎週土曜日はそわそわしています。笑 長野を乗り越えた主人公の涙にグッときました。しやがれはかわいいの連続でしたね。耳コピの際の出来た？って表情が櫻井先生を連想させてくれて身悶えておりました(低燃費)またの更新を楽しみに好きを募らせていきたいです。 (2018年10月28日 21時) (レス) id: 310e6be90d (このIDを非表示/違反報告)
ささたく(プロフ) - なんのかんの、星月先生に甘々な櫻井先生ですよね。困った顔も素敵なんでしょう。想像だけで私も幸せです。こちらでもテレビでも翻弄されて、満足の週末です。 (2018年10月28日 15時) (レス) id: 0cad052d81 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おはな
| 作成日時：2018年9月15日 0時
