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だって私には、何もないじゃないの。
先生に、何もあげられないじゃないの。
私なんか、私なんか何も。
そう思いが至ったら、涙がどっと流れた。
流れ続けて、肩が震えた。
そうなのよね、自信がないの。
何もないの。
抱かれてみて、はっきりしちゃったの。
あんなに愛される理由がないのよ。
私、そんな上等な女じゃないの。
逃げてきただけなんだと気付いた。
私が好きになった男があまりに素敵過ぎて、
怖くなって逃げてきたんだ。
先生の隣は私がいるべき場所ではなかった。
それが分かったから逃げた。
「お客さん、着きましたよ」
運転手さんの声で我に帰る。
ああ、そう。
ここが私の場所。
ここで生きるのよ。
あんなスイートルームなんて夢のまた、夢。
ごく普通の賃貸マンションは、
陽当たりだってあまり良くない１ＬＤＫ。
オートロックでセキュリティは良いけど
どうと言うこともない外観。
櫻井先生には似合わないでしょう。
一度送ってもらったことがあったけど
ちょっと恥ずかしかった。
あんな美貌の俺様作家、私には無理だ。
何もかも無理だ。
やはり睡眠の不足に思考が鈍っている。
どう足掻いてもネガティブに働く。
いいや、本当に無理は無理なんだけど、
今の思考だと理由も馬鹿馬鹿しい。
そうじゃない。
編集として“担当作家とお戯れ”なんて
有り得ないと言う点で“無理”なんだ。
私、間違えてないはず。
至極、真っ当な思考なはず。
はああ。
深いため息とともにドアノブを回す。
部屋に入ってベッドに直行して
そのまま寝てしまえ。
喜べ、A。
幸せな夜をもらえて良かったじゃない。
私は声を上げて泣いた。
止まらなかった。
嬉しかったからこそ、悲しい。
幸せだったからこそ、辛い。
知ってしまったあの囁き、
熱さ、重み、質感。
二度と触れることのない身体。
泣け！
今は全力で泣け！
目も頭もズキズキするほど泣いた。
梅雨の始まりの頃、
紫陽花を見るたびに思い出すだろう。
甘く切なく、酷く。
私が一番開いた夜。
二度とない、満ちる夜。
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おはな(プロフ) - yuriyuriさん» yuriyuriさん、強気強気で攻めました！押されまくってかわされまくって、どっち向いたらいいのか分からない状況です！楽しんで頂けて良かった。大人編はほんっとうに緊張するので胃に悪いです。 (2018年7月9日 22時) (
レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
yuriyuri(プロフ) - ドS櫻井先生最高ですよ(//∇//)足りないくらいです笑笑 主人公ちゃんは大変だと思いますが、読んでる側としてはムフムフです笑笑 続きも楽しみにしてますね！ (2018年7月9日 13時) (レス) id: b5a15157ab (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - mogmog555さん» mogmog555さん！お久しぶりです。読んで頂けていたとは、本当に嬉しいです。ちょっと凹んでましたけど、回復できそうです。いや、本当に嬉しいなあ、しみじみ。力をもらえましたから、またラストに向けて頑張れそうです。ありがとうございました。 (2018年7月8日 21時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - ささたくさん» ささたくさん、コメントに力を頂きました！夜の彼を知りたい、知りたくない、やっぱり知りたい甘い葛藤、共有できて嬉しい限りです。また表に戻りますけど、いつかまた、きっとRも頑張ります！ (2018年7月8日 21時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
mogmog555(プロフ) - お久しぶりです。しっかりちゃんと読者です。こちらのお話もどハマりで次回が楽しみでリピしながら大人しく待ってました。どうぞおなはさんの思うがままに安心して書き進んでくださいねっ。ついていきます！待ってますっ！ (2018年7月8日 13時) (レス) id: 269b4d0d5e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おはな
| 作成日時：2018年6月24日 15時
