蜜蜂と花《青》 (ページ32)

今日:19 hit、昨日:2 hit、合計:282,630 hit

32 ページ32

さぁ、どうする藤井流星

君には好きな人なんていないはず

だからこのカードに書いてあるミッションをクリアすることは不可能に近い

相変わらず女の子達は黄色い歓声を上げている

私のところへ来てほしいの一点張りなのだろう

流星はカードを手に握りしめ、見つめたままその場を動こうとしない

'あれ、藤井くん？どうしたんや？'

痺れを切らした放送部はマイクを通して声を張る

私もそんな流星をじっと見つめる

でもやがて

手にしていた紙をｷﾞｭｯと握りしめて、それを左手へと持ち替える

すると

『…』

今一瞬、目が合った気がした

いや

一瞬じゃない

私は彼から目を逸らすことが出来ない

｢やば、こっちくるで藤井くん｣

後ろにいる女の子達の声も遠く聞こえる

私の方をじっと見たまま

こちらへ近づき

藤｢…｣

『…え』

私の前へと手を伸ばした

私は息を呑んだ

杏ちゃんと大毅も、目を丸くして驚いている

周りもざわざわと先程よりも騒がしくなる

藤｢なにしてんねん｣

ｸﾞｲｯと腕を掴まれ立ち上がらせられる

私の手をｷﾞｭｯと握って

藤｢走るで｣

周りの喧騒など聞こえない

まるで２人だけの世界かのよう

太陽が、私達を照りつける

何故だかわからない

けれど

ｷﾞｭｯ

私も彼の手を強く握って

ゴールまで駆け抜けた