泣かないで。笑って。【あほの坂田】 (ページ2)

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私には幼馴染みがいる。

元気で明るくて面白くて、でもちょっぴり寂しがり屋な幼馴染みが。

『坂田、また泣いてるの?』

土砂降りの雨の中、蹲りながら泣いている幼馴染みに私は歩み寄った。

『...早く帰らないと風邪引くよ?』

私がそう言うと、坂田は泣きながら私の方を見て、消え入りそうな声で言った。

「Aっ...から貰ったネックレスっ...遊んでる間に何処かに落としちゃって...っ...それで、それでっ」

ごめんなさい。そう言おうとした坂田の唇に、人差し指を乗せ、言葉を途切らせた。

『坂田が泣いてる大体の事情は分かった。坂田にあげたネックレスは少しだけ悲しいけど、でも、』

『私は坂田が泣いているのを見るのが、一番悲しいんだ』

『だからお願い、泣かないで。いつも通り、元気に笑って』

無意識に抱き締めていた坂田の背はとても小さく、頼りなく見えた。

けれど、

「っ....うんっ。わかった...！オレ、Aの為にもう泣かない！」

そう言って笑った坂田からはとても強い意志を感じ、何処か心強かった。

それが、小学2年の時のお話。

結局、坂田が無くしたネックレスはその公園の自販機にあり、なんでこんなところにあるんだと笑い合ってたのを思い出す。

本当に、なんであんなところにあったんだろうなぁ。

「っ！...A....っ！....Aっ！」

『うおっ....な、なに坂田、どうした?』

「どうしたって言いたいのは此方や。先刻から名前ずっと言うとるのに気付かんし」

そう言い、不満そうな顔をする坂田。

面倒臭い。けど、こう云う時の坂田の対処は簡単。

『悪かったよ。今度一緒に遊んであげるから、そんなに不満そうな顔しないで、優』

私がそう言うと、坂田は一瞬間を置き、「しょうがないなぁ」と言って、機嫌を治してくれた。

私流の坂田の機嫌の治し方は簡単。

ただ坂田の下の名前を呼んで自分が悪かったようにする。はい簡単。

私は坂田と幼馴染みでありながら、この数年名前で呼んだことは片指程しかないのだ。

だから坂田は、私に名前で呼ばれるのがとても嬉しく、その一瞬だけ自分が特別な気がして尚良いとのこと(本人談)

まぁ、坂田が言ってることは少しだけ分かる気もするけど。

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