【銀魂】うまく生きる為の方法

一歩 ページ13

紫煙を吐き出しながら、状況の整理がつくと、フツフツと羞恥心が湧いてきた。




まさに、失態と呼ぶにふさわしい。
私は目の前の野郎に、ここのところ溜まった鬱憤を
全部ぶちまけた。どこで気が緩んだのか、
「他人だから」なんて理由で私の口は
開いてしまったのだ。

これまで、そんなことなかったのに。いや、他人だからと、そこらの人に吐露しまくったりなんかしていたら、それこそ私の社会性は終わってる。




(ーーなんか、この男の脱力感に、私まで引っ張られ
ちゃった、みたいな)



もしかすると、不思議な力でもあるのかもしれない
横目でチラリと伺ったが、・・いや、ないな。
そんな特別な人って感じしない。




「お前、きつそうな見た目に反して、
意外と繊細なんだな」




・・それにしても、私の痴態を目撃した割に、
男の方は変なからかいをしてくる様子がない。

何を考えてるんだろうか。
まさか、私の吐き出した客への鬱憤の数々を餌に
金を強請ろうとか考えてないよねこいつ。






「ーーーつかよ、一個いいか？」

「何よ外道」

「え、いきなりけなされたんですケド」



不愉快そうに顔を歪めるその男だが。

・・Aよ、油断するな。いくら私の発散口に
なってくれたからと言っても、こいつが胡散臭いことには何ら変わりないじゃないか。

そんな私の警戒に気づかないらしい男は、
マイペースに続ける。





「名前は」

「・・・え？」

「なまえ」


「・・・名前」





ーーーはっとする。・・そういえばそうだ。
基礎中の基礎が、私たちから抜け落ちていた。







「まだ名乗り名乗られしてなかった・・」

「不思議なもんだよな。まだ名も知らねー奴と
飯食ってんだから」



私たちがこうして隣り合わせで話すことに、
互いの名前というのはあまり重要じゃなかったのかもしれない。変な感覚。





「・・・相手に名前を聞くときはまず自分からって
学校で習いませんでしたか」

「ほんと可愛げねーよなお前」



軽く顔をしかめたそいつだったが、
諦めたようにため息を一つ落として。


「ーーー坂田銀時」と、短く呟いた。






「さかた、ぎんとき・・、ふーん」

「何だよ」




妙なむず痒さが走った。・・こいつの名前を知ったところで、別にどうってことないじゃないか。

嬉しさにも似た気持ちに納得がいかず。

私は、やや乱暴に、胸元から名刺を抜いた。





「ーー鹿地A、22歳」




これで一歩、私たちは互いに踏み込んだことになる

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