【銀魂】可もなく不可もなく

コンプレックス ページ9

万事屋にきたのは初めてではない。初依頼のときとか、ここら辺に用事があるときに挨拶に立ち寄ったりとか。






「・・で、どったの突然」



ソファに腰をかけ、一息ついたその人は、
私を向かい合う。目の前に出された湯のみから
立ち上る湯気を見つめたまま、
銀さんを直視できずにいた。





「A？」
「ーーーすみませんでした」

「は？」




ひとまず第一声が無事飛び出したところで、
間抜けな返答。そこで今日始めて、恐る恐る顔を
あげたのである。




「何の謝罪だよ」

「昨日の謝罪です」

「昨日？」

「じゃがいも」

「・・あぁ、食リポの脅迫」
「脅迫ではないですけどね」




なんだそんなこと、と耳に指を突っ込み始めた彼。
・・そんなことって。




「だって、突然じゃがいもでキレだす女って
情緒不安定というか、怖いじゃないですか」

「あー、まあ確かに怖かったけどな。じゃがいもに
おける絶対的なプライド？」

「・・・実は私、そんなにじゃがいもは好きじゃ
ないんです。サツマイモの方が好きなんです」


「・・オイそれ本格的に情緒不安定じゃね」




違うんだ。私が腹が立ったのは、何もじゃがいもの
味をテキトーに表現したってことじゃないんだ。
ぷちりといった原因というのは___、






「ーーー"普通"と言われるとどうも我慢ならない
みたいでして」





これには、それはそれは深い事情があるのだ。





「・・コンプレックスといいますか」

「コンプレックス？」


「平均子」

「は？」

「寺子屋時代の私のあだ名です」



本当に壮絶な時代だった。
薄々気づいてはいたのだ。自分が平々凡々な人間だということを。ーーでも、それを理由にバカにする
のは間違っている。ノーマルな人間だって
必要じゃないか。

まあそんなこんなで普通を極めていた私は、
5段階評価の成績のうち、6年間全教科オール3という快挙を達成。可もなく不可もなくなこれには、
さすがの先生でもコメントのしようが
なかったらしい。総評欄には

「何事にも一生懸命で優しいAちゃんが
先生は大好きですよ」とまあこんな感じに、
当たり障りのないことを連ね、最後に苦し紛れの
告白が書かれていた。


なぜだかその情報が漏洩し、私のあだ名は、平均子
なんたる屈辱。


ーーーそれからというもの、"普通"、"平凡"
その他諸々、私にとって爆発のきっかけワードに
なってしまったというわけで。

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